米ワシントン州立大学の研究者らが、重力に反発するといわれる「負の質量」の生成に成功したという驚きのニュースが飛び込んできた。
SFの世界で語られてきた夢の「反重力」がついに実現するかもしれない。

■「負の質量」の奇妙すぎる性質

まずは「負の質量」のイメージをつかんでもらうために、科学ニュース「Science Alert」の記事を参考に、簡単に説明してみよう。
古典力学における運動の記述に「ニュートンの運動方程式」というものがある。

内容は至ってシンプルで、「物体に働く力とは、物体の質量と物体の加速度を掛けたもの」だと言っっているだけ。
通常はF=ma(F:物体に働く力、m:物体の質量、a:物体の加速度)と表現される。

負の質量の奇妙さを理解するためには、この方程式を少し変形してみるだけで十分だ。
上述の方程式をa=F/m(物体の加速度とは、物体の力を物体の質量で割ったもの)と書き換えて、物体の質量に負の質量をあてはめると、マイナスの加速度を得ることになる。

つまり、負の質量を持つ物体に力を加える、たとえば指で押してみると、押された方向とは反対の加速度を得るということだ。
日常では全く見られない奇妙な現象だが、理論物理学者にとっては負の質量が存在するかしないかで大きな違いがある。

というのも、ワームホールやブラックホール、果ては仮想物質ダークマターやダークエネルギーという、これまたわけのわからないものの存在を証明する鍵が、この負の物質に隠されていると彼らは考えているからだ。
もちろん、その奇妙な性質から、物理法則を破る可能性も指摘されてきたが、今回の発見は、一般相対性理論と矛盾することなく負の物質が存在することを実証してしまったというわけだ。

それでは、研究チームが行った具体的な実験内容を見ていこう。
研究チームは、まず元素の1つであるルビジウムをレーザーで絶対零度ギリギリまで冷却、これにより、ボース・アインシュタイン凝縮と呼ばれる状態を作り出すことができるという。

この状態の粒子は、古典物理学ではなく量子力学の原理に従い、波のように振舞い始め、量子効果が巨視的に現れた「超流動」の状態になる。
すると、液体が容器の壁面をつたって外へ溢れ出たり、原子1個が通れる程度の隙間に浸透したりする奇妙な現象が起こる。

問題はここからだ。
超流動となったルビジウムにさらにレーザーを照射することで、原子をスピンの向きを変えた。

すると、不思議なことにルビジウムが負の質量を持つかのように振る舞い始めたというのだ。
その時の様子を研究チームのマイケル・フォーブス教授が興奮気味に語っている。

「押すと反対方向に加速されるんです。
まるでルビジウムが見えない壁にぶつかっているかのようでした」(フォーブス教授)

教授らの研究成果はアメリカ物理学速報誌「Physical Review Letters」(4月10日付)に掲載され、今後、各研究機関による追試が試みられる予定だという。
それにしても、負の質量が確実に存在するとすれば、SFの世界でしばしば言及されてきた反物質や、斥力として働く重力、すなわち「反重力」もいずれ実現するかもしれない。
そうすれば、反重力装置を使った飛行技術(まさにUFO!)さえ夢ではない。今後の研究・発展にますます期待しよう。

http://tocana.jp/2017/04/post_12913_entry.html
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