大手製薬会社「バイエル薬品」(大阪市)の社員が宮崎県内の診療所で患者のカルテを無断閲覧していた問題で、
この社員の代理人弁護士が19日記者会見し、診療所の医師名で発表した論文は無断閲覧で収集したデータなどを基に同社が実質的に執筆していたと指摘した。
論文は同社の新薬の営業活動に使われたという。

代理人によると、同社が2012年に血栓症の治療薬「イグザレルト」を発売した際、宮崎県内の診療所に通う血栓症患者に薬の飲みやすさなどを聞くアンケートを実施。
これを基にした医師の論文は12〜13年に2回、医学誌に掲載された。

しかし実際には、論文の執筆はバイエルが主体で、医師は字句の修正しかしなかった。
論文執筆に関して、営業担当の社員はアンケートに協力した患者約200人のカルテ内容を本人に無断で転記し、社内に伝えたが、
指示したのは上司で、転記の書式も同社が用意していたという。
医師はバイエル側から飲食の接待を受けていた。

営業担当社員が15年に一連の経緯を内部通報すると、直後に上司から退職を勧奨されるようになったという。
新薬の優位性を示す結果になった論文は、同社が販売促進に使っていたが、16年1月に取り下げられた。
バイエル薬品の担当者は、取材に「検証中なのでコメントは控える」と答えた。【熊谷豪】

配信 2017年4月19日 20時21分

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