東芝が物語る「アベノミクスの失敗」

しかし、安倍首相はトランプ氏の口を封じることよりもむしろ、国内で投資家の発言力を高めるために勇敢に行動するべきだ。
東芝が度重なるひどい情報開示で何度も新聞の経済面をにぎわしていることを公然と批判すべきだ。また、欠陥エアバッグ問題で
ワシントンで公聴会が開かれる事態を招いたタカタの愚か者たちを平手打ちするべきだ。さらに、シャープが台湾の鴻海
(ホンハイ)精密工業との交渉の終了間際になって3500億円の偶発債務があると明らかにしたことを非難するべきだ。
衆参両院で与党が過半数を占めていることを生かし、安倍首相は次のことを行うべきだ。友好企業同士の株式持ち合いの制限、
海外企業による買収阻止を目的とする「ポイズンピル(毒薬条項)」への対処、生産性を下げる年功序列の昇進制度の廃止奨励、
女性役員のクオータ制の発表、天下りの禁止だ。
日本が企業利益だけでなく、説明責任の向上に積極的に取り組むべき時はとっくに来ている。アベノミクスは金融緩和が9割を占め、
構造改革はせいぜい1割にすぎない。円安は日本株式会社が世界の荒波を乗り越えるのに役立っているが、
投資利益率(ROI)の向上を妨げる障害はまだたくさん残っている。東芝が日本の古い島国根性を露呈した同じ日に、
孫氏は米未公開株投資会社のフォートレス・インベストメント・グループを33億ドルで買収すると発表し、
新しい成長市場に軸足を移した。これはアベノミクスがもっと呼び起こしたいと考えていた大胆な国際戦略だ。
安倍首相が日本の新たなダイナミズムの到来を告げる時は今だ。