初めて預けた女性は、「ドライブのついでに」と富士山に連れて行ってくれた。
「自由に書いて下さい」と渡したノートに、行った先の絵を描いたり、美術館のチケットを貼ったりしてくれた人もいた。

 活動を続けるうちに、「お年寄りや体の不自由な人にも、ぬいぐるみを預けて楽しんでもらいたい」と思うように。
13年にはNPO法人「日本ぬいぐるみ協会」を立ち上げた。連れて行ってくれる会員を募り、連れて行ってほしい人との
マッチングを続け、実現したツアーは50回を超える。

 3年ほど前に会員になった横浜市南区の主婦、細田みかほさん(57)は、これまでに5体ほどのぬいぐるみを預かった。
旅行先は江の島や山中湖など関東周辺が中心。「どうやったらぬいぐるみが楽しそうな写真を撮れるか、夢中になって考え
ていると嫌なことも全部忘れられる」と話す。

 埼玉県入間市に住む馬渕真由美さん(51)は足が不自由で、長い時間は歩けない。手作りのぬいぐるみは、協会を通し
て台湾やニュージーランドを旅してきた。「写真を見ると、実際に自分が行ったり、旅先で人に出会ったりした気になるの
がだいご味」と話す。

 「困難を抱えている人に元気を出してほしい」という思いから、協会では「心臓が悪い」「足が不自由」という設定のぬ
いぐるみが旅をするプロジェクトも進めている。心臓にハートマークをつけたテディベアを小塚さんが、足に違う柄の布を
使って不自由であることを表現したネコのぬいぐるみを馬渕さんが、それぞれ作った。第一弾として今月、地中海のマルタ
島を訪れている。(前田朱莉亜)

■NPOが企画運営

 協会には誰でもぬいぐるみを預けられるが、ぬいぐるみを預かるホストファミリーになるには入会する必要がある。現在
の会員は約60人。ボストン在住の会員もおり、6月から約2カ月間のホームステイツアーを開催する予定。

 持ち主がぬいぐるみをツアーに参加させるための費用は3300円から。
詳しくはウェブサイト(http://www.nuigurumi.jp.net別ウインドウで開きます)か電話(045・534・9335)で。