http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-39689829

パリの同性愛者が集まる主要地区には、バー、クラブ、アダルトショップが多くある。ここには、同性婚禁止を支持する人などいないと思うだろう。

しかし、今週末のフランス大統領選挙を前に、ここル・マレ地区で国民戦線(FN)を支持する人たちがいる。そして、FNの党首はまさに同性婚を禁止すると言う。
世論調査ではマリーヌ・ル・ペン党首が同性愛の有権者から多くの支持を得ている。

BBCの番組「ニュースビート」はル・マレ地区で原因を探ってみた。

「同性愛の問題だけで投票を決めるわけではありません」とセドリックさんはビールを飲みながら、同地区にある多くのオープンテラスの店の1つで話してくれた。

セドリックさんは環境工学の学生だ。説得の末、国民戦線の支持者として記事に載ることに応じてくれた。

フランスでFNは長い間タブーだった。同性愛嫌い、人種差別、反ユダヤの疑いのかかる極小政党として。

FNは1972年、現在の党首マリーヌ・ル・ペン氏の父親、ジャンマリー・ル・ペン氏が結党した。

ジャンマリー・ル・ペン氏は300万人の外国人を強制送還を望み、ホロコーストを否定、フランスのEU加盟に反対した。
また同性愛者を生物的な変異だと発言したとされている。

今や国民戦線は主要政党となった。2011年にマリーヌ・ル・ペン氏が党首になって以来、全ての移民の一時的な受入停止とフランスの利益を最優先する公約を掲げ、今回の選挙で有力政党の一つとなっている。

同氏の別の公約に、同性愛者の結婚を認める法律の廃止がある。

「フランスには同性愛の問題より優先事項があります。僕自身も同性カップルですし、この面では多くの前進がありました」とセドリックさんは説明する。

「ただ僕にとってもっと差し迫った問題があります。経済とか、国の借金、失業問題とかです」

LGBT(性的少数者)の権利について心配しているか尋ねたところ、我々が話をするほとんどのFN支持者と同じように、セドリックさんはル・ペン氏の同性婚法撤廃の公約はこけおどしだと考えている。保守層の票を獲得するための策略だと。

この見方は少なくとも、一部事実に裏付けされている。直観に反して、国民戦線は他のどの主要政党よりも党幹部に同性愛者が多い。例えば、マリーヌ・ル・ペン党首に最も近い顧問のフロリアン・ フィリポ氏のような人だ。

(中略)

世論調査では、同党はいま多くの人が認める以上に、LGBTの人たちに人気がある。

出会い系アプリ「ホーネット(Hornet)」によると、調査した3200人の同性愛のフランス人男性のうち、5人に1人はル・ペン氏に投票すると話した。

2015年の地方議会選挙直後の他の世論調査によると、一般市民よりも同性愛の既婚男性の間でFNは人気があった。
では、一部のLGBT有権者はル・ペン氏の何に強くひきつけられるのか。多くの人にとっては、ル・ペン氏の移民への厳しい姿勢だ。

「同性愛者が一番危険な場所は? イスラム諸国です」と、取材に際し写真は撮られないたくないというパスカルさんが話す。

「同性愛者は迫害されています。イスラム教は危険だし、フランスに来て欲しくない。絶対に」

しかしパリのさらに北部、より貧しく多文化の郊外ポン=ド=フランドル地区では様子が異なる。

「あなたが話を聞いたFNの支持者は、白人でしたか?」と、ハウスDJ、キディ・スマイル氏は尋ねる。「そうですね? 驚きません」

スマイル氏が地元のゲイバーで演奏する曲には、スパイス・ガールズやマドンナの曲がかなり目立つ。

「こんなこと言いたくはないけど、LGBTの多くの人が、とても身勝手だと思います。自分たちがもはやFNの標的じゃないと感じていて、だからFNに投票してもいいと考えているんです」
「マリーヌ・ル・ペン氏は非常に賢明にも、同性愛者がムスリムの標的だと説いて回っています」

「ル・ペン氏が同性愛者を嫌いというわけではないと思います。ただ右派の人たちが聞きたいことを言っているだけだと」
「ル・ペン氏は本当に同性婚を無効にするのでしょうか? どうでもいい。そんなことを言ってもいいと思っている事実だけで、ル・ペンが非常に危険な人物ということになるから」

(英語記事  Why gay French men are voting far right)

2017/04/24

バティストとボーイフレンドのアントニーは2人とも国民戦線を支持している
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