古賀茂明
経産省には、「日本の産業を仕切るのは経産省だ」と考える「介入派」官僚のグループと「政府はできるだけ規制を減らして自由なビジネス環境を整備し、あとは企業の創意工夫と競争に委ねるベき」と考える官僚のグループがある。
常にこの両派がせめぎ合いながら、政策が生まれてくるのだ。

1990年代後半以降、日本経済が苦境にあるなか、局内で介入派グループが推す旧態依然の"トンデモ"産業政策を止めるのに苦労した覚えがある。
介入派には「民間はバカばかり。代わって俺たち優秀な官僚が企業戦略を立ててやる」と言わんばかりの「上から目線」の哲学がある。
そこから出てくるピント外れな政策が、半導体、液晶、太陽光パネル、携帯電話、家電など、日本のお家芸といわれた産業を壊滅状態に陥れたと言ってもいい。

今、公的資金を投入し、東芝メモリを日の丸連合で買収する動きが取り沙汰されるが、これは、まさに経産省介入派の考えそうなこと。
その裏に今井尚哉(たかや)首相秘書官がいるという報道が出るのもうなずける。
しかし、彼らが出てきたら、かえって失敗するのは、歴史が示すとおりだ。
官邸から経産省の影響力を排除することが、一番の「成長戦略」になるのだが。
(週刊プレイボーイ 2017-19,20号)より