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【4月26日 AFP】毎年春が訪れるたびに地政学的な緊張が高まる朝鮮半島だが、例年繰り広げられる「ドラマ」に先の読めない動きをする登場人物が新たに加わったことで、ここ数週間、懸念があおられている──識者らがそう捉えているのは、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領その人だ。

 米韓両国が大規模な合同軍事演習を実施すると、北朝鮮が「わが国を侵略するための演習だ」と非難の語気をさらに強めるのは毎年この時期の常だ。

 しかし今年は、米国と北朝鮮双方からの挑発の応酬で緊張が急激に高まると共に、メディアにはセンセーショナルな見出しが並び、世界中の注目が同域に集まった。

 北朝鮮の脅迫めいた発言や行動は今に始まったものではなく、過去にはさらに踏み込んだ事例もある。2010年には、韓国軍の哨戒艦「天安(Cheonan)」が沈没し、46人が死亡する事件が発生。韓国の民軍合同調査団は、同哨戒艦は北朝鮮によって撃沈されたと結論付けた。北朝鮮はその3年後、核戦争が迫っているとしてが在韓外国人らに国外避難を呼び掛けた。

 一方、これまでの米政権内では冷静な見方が常時優勢で、双方が実際に一戦を交えたことは一度もなかった。今回、衝突への強い懸念が生じている現状について、識者らはその主要因としてトランプ新政権を挙げる。韓国の首都ソウル(Seoul)にある北韓大学院大学(University of North Korean Studies)の具甲祐(Koo Kab-Woo)教授も、「この大きな変化は、米政府に起因する」と指摘する。

 米国によるシリアへのミサイル攻撃と、アフガニスタンへの大規模爆風爆弾(GBU-43/B Massive Ordnance Air Blast)、通称「MOAB(モアブ)」または「すべての爆弾の母(Mother Of All Bombs)」の投下は、米新政権には自国の軍事力を遺憾なく発揮する用意があるという不吉な信号とみなされた。

■「振り上げた拳のやり場に困っている」だけ?

 トランプ氏はまた、習近平(Xi Jinping)国家主席との首脳会談後、中国が予測不能な同盟国、北朝鮮を制御できないなら米国による単独行動も辞さないと豪語している。

 英シンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」米ワシントン(Washington)支部の所長を務めるマーク・フィッツパトリック(Mark Fitzpatrick)氏はAFPの取材に対し、「トランプ氏が優位に立てば、米国がどんな動きに出るのか不確実な要素が非常に大きくなる」「彼のツイッター(Twiter)上の脅し文句を読む者には、同氏が北朝鮮も攻撃するのではないかという疑念を抱かせるはずだ」と分析する。

 トランプ氏のツイートにはどぎつい表現が多いことに加え、同氏が気まぐれなせいで、中国政府にも不安が広がっていると指摘する声もある。

 とはいえ、米政府はその発言を実際の行動には移していない。朝鮮半島に海軍艦隊を派遣したと発表した際には、実際は何千キロも離れた場所に艦隊が向かっていたことが判明し、失態の釈明に追われた。

 米政府が大口をたたいた手前、信頼性を維持するために引っ込みがつかなくなるという「振り上げた拳のやり場に困る」状況が生まれるのではないかという見方もある。

 フィッツパトリック氏は、「本音とはったりとの区別がつきにくく、しかもトランプ大統領は人をハラハラさせる名人」としながらも、トランプ氏は「以前の約束を遂行することにさほどこだわらないタイプに見える」と付け加えた。「自身の政策選択の判断に関しては限りなく柔軟だ」(c)AFP/Hwang Sunghee

2017/04/26 11:42(ソウル/韓国)