『核爆発災害』 高田純
最初のシミュレーションは、核弾頭の空中爆発である。ゼロ地点を仮に永田町として同心円を描いた。
爆発高度を600メートルとし、爆発威力を20キロトンと設定する。直径220メートルの眩しい火球が都心の上空に出現し、核爆発災害の発生となる。

熱線・初期核放射線を含む閃光に、屋内外の多数の都民が曝露される。
屋外にいる人の多くは直射を受け、屋内の多くの人たちも大面積のガラス越しに照射される。
熱線はビルの外壁に多用された熱線反射ガラスで一部が反射され、直射されない影にいた人たちも反射された熱線を受ける。
高層ビル内の人たちは、現代建築の薄い板状の外壁材を透過した初期核放射線に曝露される。
閃光は光の速さで進むので、街は閃光に曝露した直後に衝撃波で粉砕される。

首相官邸の外壁はガラス面積が大きく、衝撃波を考慮した構造になっていない。
厚いコンクリート製の建築は、国会議事堂などごく少数ではないか。
軽量な外壁からなる高層建築は、衝撃波に対して弱く、近距離では全壊する。
ゼロ地点に近いほど、鉛直方向の力が作用するので、高層ビルの瓦解は、あるとすればゼロ地点に近い場合である。
地下施設は、空中爆発では破壊されない。地下に通ずる開口部の面積が小さく、地下内部に衝撃波が入り込みにくいからである。
ただし、ゼロ地点近傍の高層建築の地階は、上層部が瓦解した場合には圧縮されてしまう。
地上電線は2キロメートル圏内で破損し、停電する。ただし、地下ケーブルは破損しない。
自動車は2キロメートル圏内で、ガラスが破損し横転する。したがって都心は、首都高速をはじめ、全面的に交通マヒ状態になる。
JRなどの電車は1400メートル圏内では脱線する。一方、都内に縦横に巡らされている地下鉄路線は、損害を受けない。

都心が核弾頭攻撃を受ける事態では、NHK、日本テレビ、TBS、テレビ朝日、テレビ東京の5局は、人的・技術的に瞬時に無能化するおそれがある。
一方、都心から離れているフジテレビは生き残る可能性が大きい。永田町からの距離は8キロメートルである。
20キロトン核爆発ならば、閃光および衝撃波の被害は受けない。
大型核兵器でなければ、お台場をつなぐレインボーブリッジ・首都高速湾岸線も破壊されないだろう。