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■東大大学院は留学予備校

 経済学の世界では、頭脳流出はかなり前から始まっているそうです。出身の東京大学大学院の修士課程は「留学予備校とも言われ、ほぼ全員が博士課程での留学を目指します。そして、かなりの人が海外で就職し、帰って来ない」とのことです。

 そして昨年度は、国内の若手トップと言われる研究者2人がアジアの大学に移籍したといいます。

 「日本の国立大学は、本当なら、手放したくない人材によそからのオファーが来たらカウンターオファーすべきです。給与制度全体を変えられなくても、その人の等級をぐんと上げて高い待遇を示すとか。できるはずなのに、しない」

「現場の最適化」も進まない

 大学教員の仕事での研究と教育、事務のバランスについても、同じ思いを持っています。

 「講義が得意な人には講義を多く任せ、研究が得意な人には講義の負担を減らす。それができれば、大学全体のパフォーマンスが上がるのに、そうなっていない。一橋大の中で論文の執筆数などのデータを見ても、それは明らかです」

 日本の国立大に職を得て2年。大学の経営陣が、文部科学省からの運営資金を得るためにキャッチコピーづくり的な事務作業を優先する一方で、限られた資金の中で現場を最適化する経営に目が向いていない、と感じています。

■意外に多かったポジティブ反応

 教員からのボトムアップで改革をしようにも、議論も起こらない。そこで、自らの移籍を奇貨として議論を呼び起こそうとしたのが、一連のツイートでした。

 ネガティブな反応もありました。「日本の平均所得より多くもらっているのに何を言っているんだ」や「日本経済を救えない経済学者の給与がよそより低いのは自業自得」などで、「頭脳流出させない大学経営」というテーマとずれたものが多かったそうです。

 「拡散の規模や反応は、だいたい予想通りでした。ただ、予想が違ったのは、ポジティブな反応が多かったこと。半分程度かと思っていましたけど、7割ぐらいでした。経済学者なのに感覚的な数字で申し訳ないですが」
(続く)