最盛期の1995年頃は市場規模約30兆円、店舗数約1万8000店だったパチンコ・パチスロ業界。
しかし、近年ではギャンブル依存症や高い射幸性の問題によってさまざまな規制がかけられ、2015年には市場規模約23兆円、店舗数約1万1000店に減少している。
17年には、店舗数が1万店を割っていることも明らかになった。

斜陽産業と見られているパチンコ・パチスロ業界について、「もうすぐなくなるのでは?」と危惧する声も多いが、実際はどうなのだろうか。
さまざまな数字を見る限り、業界が右肩下がりなのは間違いない。
しかし、「簡単に崩壊するような業界ではない」と語る関係者も多い。

「日本が世界に誇る自動車業界の市場規模が約60兆円といわれており、それにはかなわないものの、外食産業の約25兆円、スーパーマーケットの約13兆円、百貨店の約6兆円と比べれば、パチンコ・パチスロ業界がいかに大きいかがわかるでしょう。
同程度の規模と推測される外食産業が、これから数年で崩壊し、身の回りのお店が一切なくなることを想像できますか?」

そう語るのは、東京都内のパチンコホール関係企業に勤めるAさんだ。
では、市場規模が縮小しているなかで、どんな人たちが業界を支えているのだろうか。

「ヘビーユーザーですよ。“中毒者”といってもいいでしょう。
昔と比べて遊技人口は減っていますが、1人当たりの使用金額は増えているんです」(Aさん)

日本生産性本部の「レジャー白書」によると、00年に約2000万人だった遊技人口が15年には約1000万人に半減。
しかし、1人当たりの年間平均費用は8万8200円(00年)から9万9800円(15年)に増加している。

これは、あくまでも平均額だ。現行のパチンコ台が1万円を使い切るのに1時間かからないことを考えれば、ヘビーユーザーの年間費用がかなりの額になることは想像に難くない。
また、1人当たりの年間平均遊技回数も23.9回から32.4回に大幅に増えており、ヘビーユーザーが足繁くホールに通っている様子が想像できる。
「どんな業界でも、最後まで残るのはヘビーユーザーやマニアックなユーザーなんですよ」と語るAさんも、週末は客としてホールに入り浸っている。

■借金300万円、一攫千金を夢見るヘビーユーザーも

そんなヘビーユーザーの1人に話を聞いた。
「仕事以外にやることがないので、ついつい行っちゃうんです。4月は13日間で4勝9敗です」

彼の見せてくれた1日当たりの収支(端数は除く)を並べてみよう。
2万、−3万、+2万、+4万、−3万、−3万、−2万、+5万、−5万、+1万、−4万、−2万、−2万……+額12万円に対して−額は26万円だ。
「今月はまだないですが、月に1回、10万以上プラスになる大爆発デーがあるので、今やめるわけにはいかないんです」という。

彼の職業はタクシー運転手。
ときには仕事に行く時間を遅らせてでもパチンコ台にかじりつき、一攫千金を夢見ている。
家には、数種類のパチンコ関係の本があった。財布の中には、数枚の消費者金融のカードが見える。

「借金ですか? 300万ぐらいじゃないかなぁ」
50歳独身の彼は、そう語ると休憩中の台に戻っていったが、今日もまた、爆発を夢見てリーチがかかると「どんどん!」と台を叩いていた。

■今後は格差拡大が進むパチンコ業界

こうした、体力(資金)と意気のあるユーザーが業界を支えるという図式は、ホールにおいても成り立つ。
店舗数同様、パチンコ・パチスロの設置台数も大きく数を減らしているかといえば、そうではない。
約474万台(00年)から約458万台(15年)の微減にとどまっている。

これは、体力のない店舗が潰れ、勝ち組である大規模チェーンが店舗の大型化を進めた結果である。
「この傾向は、今後も続くだろう」とAさんは予測する。

「業界のバブルは終わりました。今後は勝ち組と負け組のホールがはっきり分かれ、格差がどんどん広がるはず。
でも、それはこの業界に限らず、どの世界でも同じことですよね。
成熟していくにつれて優劣がついてしまうのは仕方ありません」(Aさん)

http://biz-journal.jp/2017/05/post_19058.html
http://biz-journal.jp/2017/05/post_19058_2.html