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石田衣良 の ブルータワー のリアル化かw

大手通信会社社員で、新宿のタワーマンション上層に
住む、勝ち組だったはずの、瀬野周司は死に瀕していた。
余命は1、2ヶ月といったところか。
体をむしばむ悪性腫瘍は脳の運動野の周辺を
冒しているため外科的な手術は絶望的だった。
勿論化学療法や放射線治療も行ったが、
健康な細胞すら殺す化学薬品となんの効果も及ぼさなかった
放射線治療が残したのは頭髪が抜け落ちるという惨めな結果だけだった。
腫瘍は周司に苦痛とフラッシュバックを生んでいた。
同僚との面会が終わった後、いつもの頭痛が始まった。
薬を飲んだのだが上手く利いているとは言い難い。
現実感を失った世界の合間でしばしば彼は幻視をしていた。
気を失っている間に見ているらしい。
また短いまどろみの垣間見せる脳の見せる幻想なのだと思っていたが、
激しい頭痛の後に広がった世界は薄ぼんやりと煙っていた。
どうやらひどく高いところから見下ろしているらしい。
周司は、そこが未来の日本で在ることを後に知る。単なる脳が見せる妄想では無かったのだ。

そこでは彼はセノ・シューと呼ばれ、青の塔と呼ばれる
全長2kmという、超高層で巨大なハイパーストラクチャーの
政治を司る、統治集団「三十人委員会」の委員の一人だった。

21世紀半ば、分裂した中国が、
イスラムやインド、アフリカと同盟を組んだ内陸部の
全体主義・軍国主義色が強い西中国と、
米・日(統一)韓などと連合を組んだ、沿岸部の資本主義
体制な東中国に別れ、互いに覇を競い、全面戦争に突入。
著しい劣勢に追い込まれた西中国が、エボラと
インフルエンザを改変したワクチンすら製造できない、
テラ殺戮ウイルス兵器を撒いたのだという。
それは「黄魔」と呼ばれ、ワクチンすらはねとばす
複雑怪奇な構造によって罹患者の50%以上を死に追いやる、
たとえ治癒しても、醜悪な傷と半身マヒなどの
深刻な後遺症を残す絶望的で、破滅的な大厄災を世界に振りまいた。

挙句に、全世界パンデミックで断末魔に陥った、ロシアとEU
が、核ミサイル多数を、旧中国や日米韓の主要都市に撃ち込んだ。
やがて世界は、Falloutと、「黄魔」に対抗できずに
国という枠組みを失い、塔と呼ばれる、
巨大超高層ハイパーストラクチャー毎の自治がなされるようになる。
だがどれほど大きい建物であっても収容人数は50万人程度。
限られてくる。
世界は、悪夢としか思えない「大選別」の後の
暗黒中世をやり過ごそうとしていた。
勿論、塔の外で生活している者も居ないわけではないし、
塔の階層毎に、れっきとした強烈なカースト制度が
敷かれていた。多くの下層民は著しい貧困と抑圧状態にあったのだ。

旧日本にある、七つの塔は、階層格差を徐々になくす
方向に議会が動いていたが、事態は逼迫しているようだ。
「上層部解放」を叫ぶ、テロ集団が、ある塔では、
旧中露から密輸された核で核自爆テロやらを起こし、
ある「塔」では治安軍が、ゲリラとの間で、もはや
自暴自棄な高致死性生物兵器テロを起したり、
青の塔ですら、テロ、武力衝突も珍しくない。
周司は、そこでセノ・シューとなり、元の自分の部下達と
名前の似たメンツと出会い、世界を救おうとする。