全体として、偏った視点による誇大な危険性の宣伝を鵜呑みにした
日本の現状に対する理解に乏しい報告書といわざるを得ない。

>法案で対象となる犯罪が幅広くテロリズムや組織犯罪と無関係のものを含んでいる

テロリズムの特徴は目的のためには手段を選ばないことにあるので、
テロリズム集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画の処罰(これに伴う抑止)において、
最悪の事態を想定すべき危機管理の観点からは、対象犯罪を幅広く想定するのは妥当である。

もちろん、合理的な範囲を超えた処罰を避けるべきであることはいうまでもない。
そこで、構成要件上、処罰されるのは、「犯罪の実行を目的とする団体」の活動として、
実行準備行為を伴う「犯罪の組織的な遂行を二人以上で計画した者」に限定されている上、
組織犯罪防止条約による「重大な犯罪」の定義である「長期4年以上の自由を剥奪する刑」(2条(b))を
科することができる犯罪について、処罰の対象となるにとどまる。

>「計画」や「準備行為」の文言が抽象的

法律は、それ自体の性質上、ある程度までは一般的・抽象的な定め方とならざるを得ない。
そこで、その解釈が必要となるところ、計画とは、「物事を達成するための手段・方法を
筋道をたてて考えること」を意味し、日本語において、多義的な用語ではない。
したがって、「計画」という文言が抽象的であるがゆえに不明確であるということはできない。

準備行為については、計画に基づく「資金又は物品の手配」、「関係場所の下見」が例示として
挙げられており、これらが「計画をした犯罪を実行するための準備行為」に該当することは明確である。
準備とは、「ある事を行うにあたり、前もって用意すること」を意味し、日本語において、多義的な用語ではない。
したがって、「準備行為」という文言が抽象的であるがゆえに不明確であるということはできない。