よこはま動物園ズーラシア(横浜市旭区)で、「世界一美しいサル」といわれる「アカアシドゥクラングール」の赤ちゃんが誕生し、20日に初めて一般公開された。

 東南アジア原産の希少種で、飼育員たちの奮闘で元気な姿を見せた。

 親子連れやカップルでにぎわう園内でこの日、赤ちゃんはひときわ人気を集めた。同園で生まれた3匹の子供(2〜3歳)の近くで、母親の「ワニ」(10)に抱かれたオスの赤ちゃんを見つけた来園者からは「かわいい」「抱いてみたい」といった声が上がった。

 生まれたのは4月23日で、現在の体長は約20センチ。赤ちゃんは木にぶらさがろうとしたり、柵につかまったりと元気いっぱいで、落ちそうになるとワニが木の上に引き上げていた。

 このサルは木の葉を主食とし、熱帯雨林に群れで暮らしている。だが、ベトナム戦争時に米軍が使った枯れ葉剤で生息地の大半を失ったとされ、絶滅が危惧されている。国内で飼育しているのは同園だけという。

 幼い頃の体毛はグレーや茶だが、数年後には体長60〜75センチに成長。体毛は所々に栗色やオレンジ色が交じった灰褐色になり、顔の周りは白く長い頬毛に覆われる。鮮やかな色合いが美しいと言われるゆえんだ。

 同園では2013年末、待望の赤ちゃん「ムー」が初めて生まれたが、母親のツバオが出産直後に体調を崩し、川口芳矢さん(42)ら飼育員3人が付きっきりで親代わりを務めて日本初の「人工哺育」を成功させた。翌年誕生した「ショーン」も人工哺育だ。

 ただ、2匹には「親に育てられた子供より線が細い」「飼育員には呼びかけるのに、親たちには話しかけない」(川口さん)といった懸念があり、親が直接育てる「自然哺育」の重要性も痛感したという。

 そこで川口さんらは、発情期を確認して交配の時期を調整することで、苦手とする冬の出産を回避することに成功した。春から夏に生まれた2歳の「アーニ」、1歳の「サオ」、そして今回の赤ちゃんは自然哺育も順調といい、同園での飼育数は計9匹にまで増えた。

 川口さんは「子供たちが無事に成長できるよう見守っていきたい」とし、「ムーやショーンも、ワニの子育てを見て学んでくれれば」と期待している。(鬼頭朋子、坂場香織)

2017/5/22 8:11 読売新聞
http://yomiuri.co.jp/national/20170521-OYT1T50041.html

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アカアシドゥクラングールの赤ちゃんと母親のワニ(20日、よこはま動物園ズーラシアで)
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