特定秘密保護法、安保関連法の次は「共謀罪」の創設か。

 「共謀罪」の創設は国民の「思想・信条の自由」を奪う法律に他ならない。
憲法で保障された基本的人権を蔑ろにした、途方もない悪法である。

 パリの同時多発テロ事件を受け、自民党の谷垣禎一幹事長が2015年11月17日、テロ撲滅のためには「共謀罪」の創設が必要との認識を示した。
谷垣氏は「来年5月に日本は伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)を開く。前から(共謀罪を含めた)法改正は必要と思っている」と強調した。

 菅義偉官房長官は参院選への影響を懸念したのか、法整備について、「これまでの国会審議で不安や懸念が示されているので、慎重に検討をする段階だ」と述べた。
一方で、「国際社会と連携して組織犯罪と戦うことは重要な課題であって、国連国際組織犯罪防止条約締結に伴う法整備は進めていく必要がある」と、前向きな考えを示した。

 政府・自民党は「テロ対策」を名目にしているが、過去に3度も国会提出されてきたことからも、テロ対策がこじつけに過ぎないことは明白だ。

 「共謀罪」の創設は、2000年11月に国連総会で採択された「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」に批准するための措置であるとされている。
現在177カ国が同条約に批准しているが、多くの国は新たに共謀罪を創設せずに批准している。
日本は署名したものの、共謀罪の創設にこだわるあまり、いまだに批准ができていない。

 政府原案によると「共謀罪」とは、4年以上の懲役刑に該当する犯罪について、「共謀」することを罰するものである。
「4年以上の懲役刑」に該当する犯罪は600種類以上にものぼり、これらに該当する犯罪の共謀をした者は、原則2年以下の懲役刑に処される。
ただし、死刑、無期、10年以上の懲役に該当する犯罪に限っては、懲役5年以下の刑罰が下されることとなっている。

 「共謀罪」は、「未遂罪」や「予備罪」とは、まるで異なる。
犯罪の実行に着手したが、結果的に遂げられなかったものが「未遂罪」、計画した殺人に使用する目的で凶器を購入することなどが「予備罪」。
つまり、「未遂」以前の、そのまた「予備」以前の、「話し合って合意したとみなされる段階」で裁くことが「共謀罪」なのだ。

 「未遂罪」「予備罪」ですら、ごく一部の重大犯罪にのみ、例外的に設けられたものだ。
具体的な犯罪の実行があり、被害があらわれて初めて処罰対象になるという「近代刑法の原則」から根本的に逸脱するからである。
「共謀罪」が創設されるということは、刑法の原則、根幹が崩れることを意味し、日本が近代刑法を採用する近代的な法治国家であるとはいえなくなることをも意味する。
日弁連は「共謀罪が成立しない犯罪はごく限られたものだけであると言っても過言ではない」と指摘している。
 
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