退職自衛官を防災・危機管理担当ポストで雇用する動きが全国の自治体で進む中、全都道府県で唯一「空白」だった沖縄県で初めて豊(と)見(み)城(ぐすく)市が今年度から自衛隊出身者を採用したことが28日、分かった。在日米軍専用施設の約7割が所在する同県には自衛隊へのアレルギーもくすぶり続けているが、変化の兆しが見えつつあるようだ。(高木桂一)

 沖縄県内の首長のうちでも自衛隊との協力に極めて積極的な立場をとる豊見城市の宜保晴毅市長が先陣を切った。同市などによると、4月1日付で那覇所在部隊出身の元2等陸佐を総務課防災班の職員として正式に採用した。これを受けて、同県内では来年度以降の退職自衛官雇用を検討する自治体もあるという。

 自衛隊沖縄地方協力本部によれば、同県では離島からの緊急患者空輸や不発弾処理、北朝鮮のミサイル発射対応などに際しての自衛隊とのパイプ役が期待されている。

 平成7年の阪神・淡路大震災以降、退職自衛官を採用する自治体が全国に広がった。防衛白書によれば、28年3月31日現在、沖縄県を除く46都道府県・249市区町村で372人を雇用している。

 役割は、防災計画の作成や防災訓練の計画・実施、台風・地震といった大規模災害発生時の自衛隊との調整など広範だ。防衛省関係者によると、23年の東日本大震災や28年の熊本地震の際にも、自衛隊や自治体との連携を円滑に進める大きな原動力となったという。

 防衛省と自衛隊は、退職自衛官の再就職を人事施策での最重要事項の一つに据え、全国の自治体に雇用を働きかけてきた。内閣府も27年10月、専門性を有した防災のプロを認定する「地域防災マネージャー」制度を創設し、同資格を有する者を採用した自治体に人件費の一部が特別交付税として交付される。

2017.5.29 06:06 産経新聞
http://www.sankei.com/smp/affairs/news/170529/afr1705290001-s1.html