福島県会津若松市中心部で31日未明から朝にかけ、クマの目撃が相次いだ。

 市は県警から危険情報の提供を受けていながら市教育委員会へ報告せず、現場一帯に15校以上ある小中高校では通学時間帯の子供たちに安全対策を施すことができなかった。市の担当者は「対応が不十分だった」と陳謝し、今後は市教委などへの速やかな情報提供を徹底させる考えを示した。

 会津若松署の発表によると、最初の目撃は午前0時45分頃、同市本町の諏方すわ神社の境内で。次いで、同2時40分頃には約2キロ南西の住宅街で近隣住民が目撃。さらに同4時半頃に約1・5キロ南東の工業団地内で見かけた。

 同9時頃には西隣の公園で目撃され、同10時頃に地元ハンターによって射殺された。クマは体長約1メートル30、体重約60キロのオスの成獣で、目撃された一連のクマと同じ個体とみられる。けが人はなかった。

 計4回の目撃情報は通勤通学時間帯まで相次ぎ、その都度、同署から市側に電話で報告されていた。にもかかわらず、市の担当者は市教委へ伝えなかった。

 その結果、小中学校の始業時間(午前8時5〜15分)になっても学校側に伝わらず、子供や保護者たちは危険情報を知らされないまま通常通り通学していた。

 周辺小学校の校長は「全校児童が登校を終えてから、新聞社の取材で危険だったことを知った。登校時間帯の対応が最も重要だったのに」と憤った。県教委の担当者も「直ちに対応しなければならない話だ。学校に伝わらなかったのは問題だ」と苦言を呈した。

 市農林課は同日、市役所で経緯を説明した。市は夜間・早朝に学校近くでクマが目撃された場合の対処について、ルールを設けていないという。市教委に連絡しなかった理由は、「3回目の目撃情報後、警察とパトロールをした。目撃情報も途絶えたので、安全が確保されたと思った」とした。しかし、実際にはその後4回目の目撃があった。

 取材に対し、同課の一条芳浩課長は「対応が不十分だった。今回のケースを反省する」と述べ、今後は他部署と協議して新たなルール作りを進めるという。
2017年06月01日 17時31分 読売新聞
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