科学者にとっても「想定外」だった東日本大震災から6年になります。
地震については、近年だいぶ多くのことが分かってきましたが、まだまだ謎に包まれていることがたくさんありとても興味深い研究の対象です。
今回は、地震の基礎知識である「震度」「マグニチュード」について、東大で地震学を専攻している筆者が解説します。

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■そもそも震度とマグニチュードの違いは?

「マグニチュード」はよく「地震の規模」の指標と呼ばれます。
地震により発生したエネルギーの大きさを指すので、1つの地震について1つしかありません。
これに対して「震度」は「その場所での揺れの大きさ」を表したもので、1つの地震でも場所により違いがあります。

■震度が決まる仕組み

そもそも地震とは何でしょうか? 
昔の人は地面の中でナマズが動くなどと想像したそうですが、現在では地下の急激な断層運動であることが分かっています。

岩盤内にある亀裂に強い力がかかると、耐えきれなくなってずれ動きます。
この過程が非常にゆっくり起これば地面が揺れることはないのですが、急激に起きると(だいたい数メートル毎秒)地震波が放出され地上まで伝わって揺れを感じるわけです。

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私たちが「揺れたな……」と思ってテレビをつけるとだいたい1分ほどで震度速報が流れます。
震度(ある地点における揺れの強さ)は地震計が測定した加速度をもとに、震度0から震度7までの10段階で表されます(震度5と6は弱・強に分かれています)。

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現在は、地震計が計測した地面の加速度から震度を計算していますが、実は1996年以前は機械ではなく人間が測定していました。
「これくらい揺れたから震度4、これくらい建物が壊れたから震度6強」という感じです。
地震の観測というのは実はすごく最近になって発展してきたのです。

■マグニチュードは地震の大きさ M12だと地球が真っ二つ

震度が発表されたのち、地震の発生から3〜4分たつと、気象庁が各地の地震計のデータを分析して地震の震源の位置とマグニチュードを発表します(また、津波の危険性がある場合は津波注意報・津波警報を発表します)。
マグニチュードは「地震の大きさ」を表す値です。

同じ地震でも震度は場所によって異なるので、地震そのものの大きさを表す量としてマグニチュードが使われます。
マグニチュードは地震のエネルギーといわれることが多いですが、おおよそ地震で動いた断層の大きさに対応しています。

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マグニチュードが1大きくなることは、地震のエネルギーが√1000=だいたい31.6倍になることを意味しています。
これは断層の面積がおよそ10倍になることに対応しています。
理論上、マグニチュード12の場合は長さ1万キロメートルの断層が動くことになりますが、地球の直径は約1万3000キロメートルであるため、ほとんど「地球が真っ二つに割れる」ことになってしまうというわけです。

また、断層の面積が大きくなることは地震の破壊が始まってから終わるまでかかる時間が長くなることを意味しています。
実際大きな地震ほど揺れの継続時間が長くなります。
M9.0の東日本大震災では本震の揺れだけで3分程度持続しました。
「揺れは小さいけど長いな……」と感じたらそれは遠くで発生した大きな地震である可能性が高いです。

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※続きます