フランスで議会下院の選挙の決選投票が行われ、公共放送「フランス2」はマクロン大統領の新党「共和国前進」が単独で過半数を占めることが確実になったと伝え、マクロン大統領が安定した政権基盤を築く見通しとなりました。
一方で、投票率は過去最低になる見通しで、マクロン政権としては国民の幅広い支持を得ることが課題となりそうです。

フランスの議会下院にあたる国民議会の選挙は、先週の1回目の投票に続いて18日、上位の候補者による決選投票が行われ、日本時間の午前3時にすべての投票が締め切られて開票作業が進んでいます。
公共放送「フランス2」は、マクロン大統領の新党「共和国前進」が311議席を獲得して単独で過半数を確保し、選挙協力している中道政党と合わせると全体の60%を超す350議席余りを獲得することが確実になったと伝えました。

これに対して、これまで交互に政権を担ってきた中道右派の共和党は101議席、中道左派の社会党は34議席と大幅に議席を減らし、先の大統領選挙で躍進した極右政党・国民戦線も8議席にとどまる見通しです。
既成の政党に属さず議会に支持母体をもたなかったマクロン大統領は、新党が単独で議会の過半数を確保し、安定した政権基盤を築くことが確実になりました。

一方で、フランス2は投票率が過去最低のおよそ43%にとどまるという見通しも伝えていて、新党が有権者の幅広い支持を得ていないことも浮き彫りになり、マクロン政権としては今後、具体的な成果を示し国民の信頼を勝ち取ることが課題となりそうです。

■「フランスに新たな可能性」

マクロン大統領の新党「共和国前進」のバルバルー暫定代表は声明を発表し、「われわれが議会の過半数を確保したことは、フランスに新たな可能性をもたらすものだ。
第5共和制の下で国民議会は初めて徹底的に刷新され、より若く力強く多様化することになった。この勝利を責任感と謙虚さを持って受け入れたい。大統領選挙と議会選挙を経て、私たちの運動の歴史は新たな段階に入る」としています。

■新党の候補者はほぼ半数が政治経験なし

マクロン大統領の新党「共和国前進」は、これまで大統領が率いてきた政治運動「前進」を政党として組織し直したものです。
マクロン大統領は去年4月、大統領選挙に向けて草の根の政治運動「前進」を立ち上げ、「左派でも右派でもない新しい政治を目指す」として、支持を広げました。

新党「共和国前進」も、大統領に賛同する候補者を幅広く公募し、選挙協力する中道政党と合わせて530余りの選挙区で候補者を擁立しました。
候補者は男女がほぼ同数で、大半が大統領の選挙運動を支えた運動員ですが、その半数は政治経験のない市民です。

このため「共和国前進」には、既成の政治を刷新することへの期待が高まる一方で、議員の政治経験の不足からどこまで具体的な成果を上げられるのか、疑問視する声も上がっています。

■下院での多数派形成が政権安定への鍵

1958年に成立したフランス第5共和制の下で、大統領は首相の任命権や議会の解散権、国際協定の承認など、内政から外交に至るまで強い権限を持ち、軍の最高司令官や国防・国家安全保障会議の議長も務めます。

ただ、強大な権限を持つ大統領にとっても、議会下院にあたる国民議会で大統領を支持する勢力が多数派を形成できるかどうかが政権を安定させるうえで鍵を握っています。
国民議会は大統領が発足させた内閣に対する不信任動議を決議することができるため、議会の構成が大統領の政権運営を大きく左右するのです。

第5共和制の下、大統領を支持する勢力が国民議会で最も多くの議席を獲得したのは2002年のシラク大統領のときで、大統領の中道右派政党が63%余りの議席を占めました。

一方で、大統領の出身母体とは異なる勢力が議会の多数派となり、大統領が対立する政党の首相を任命せざるをえなくなり、いわゆる「保革共存政権」となったこともあります。
1986年に左派のミッテラン大統領の下で右派のシラク内閣が、1997年に右派のシラク大統領の下で左派のジョスパン内閣が発足するなど、大統領と首相が対立してたびたび政治が停滞しました。

このため、今回の選挙でマクロン大統領の新党「共和国前進」が国民議会の議席をどこまで獲得できるかに、大きな関心が集まっているのです。

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配信 6月19日 6時58分
NHK NEWS WEB
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170619/k10011022301000.html