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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51994
もしもAさんの肩をもつなら、Aさんはその場で挙証責任については留保しておかなければダメだった。そして前川氏は、この議事録が出た後に、交渉ステージを課長級から局長級に上げなければならなかった。それを怠った段階で、文科省の負けなのである。
なお、Aさんは、文春の記述と公表された議事録から、文科省の牧野美穂課長補佐ではなかろうかと思われる(申し訳ないが、これは公開された文書なので、このような推測が可能になってしまうのだ)。

また、この議事録を見ると、そもそも文科省が学部新設の告示の時点で医学部と獣医学部を門前払いしていたのがわかる。一応許認可制度である以上、許可条件を書くべきであり、門前払いした段階で法違反の告示である。

そんなこともわからないのなら、文科省は行政官庁として失格と言わざるを得ない。前川氏は、行政がゆがめられたというが、文科省のゆがんだ行政が、内閣府に正されただけだ。
もし前川氏や寺脇氏が文科省の主流的な考えであれば、文科省は説明責任が果たせない、上から目線の時代遅れの許認可行政組織である、ということになってしまう。これでは、解体的な出直しが必要になる。

また、文科省の文書再調査によって、獣医学部の新設について「広域的に」と書き加えた文書が出てきた。「広域的に存在しない地域に限り、獣医学部の新設を認める」という意味のもので、
この文言が入ったことで、大阪府内の大学に獣医師養成課程がある京都産業大は新設を諦めざるを得なかった、と解説するメディアがあった(たとえば、毎日新聞6月15日記事を参照されたい https://mainichi.jp/articles/20170616/k00/00m/040/086000c)。

文科省再調査では、この文言を書き加えるよう指示したのは萩生田光一・官房副長官とされていたが、実際には山本地方創生大臣の指示であることがのちに明らかになった。

これについてマスコミの多くは、「辞任するクビを差し替えた」と捉えたようだ。つまり、萩生田氏を守るために、責任を山本氏に押し付けようとしている、ということなのだろうが、
まさにこれこそ「読めていない」のだ。もともとは「萩生田氏が『広域的に』という文言を加えるように指示している」というメールを、内閣府の職員が文科省側に送ったということだが、これは内閣府の人が単に指示の主体を間違えただけである。

それに先述のとおり、一部マスコミは「広域的に」の文言が加わったことで、事実上京産大が排除されたと解説していたが、これは間違いだ。

地方行政をやっている者なら知っているはずだが、「広域的に」とは、複数の市町村に、という意味合いである。その意味であれば、京産大は申請可能だったのだ。しかし、
事情を知っている京産大はそんな無粋なことをやらなかっただけだ。これについても、マスコミよりもテレ朝「ワイドスクランブル」のCM中に私に聞いてきたコメンテーターの方が賢いといえる。

こうした情けないマスコミの体質によって、文科省課長補佐が書いたに過ぎないメモのなかに「総理の意向」とあるだけで、鬼の首を取ったように国会が大騒ぎをするのは困ったものだ。

総理とも会ったこともないような各省庁の課長補佐のメモが正しいという思い込みで、総理の首が取られるようなことがあるならば、それこそ民主主義としておかしいだろう。

前川氏の記者会見での発言も、間違いだらけだ。挙証責任の話は、前の本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51868)に書いたが、そのほかにも、部下の書いたことを信じるので、
あの文書は本物だと言っていた点。管理職として、部下を信じること自体はいいのだが、裏付けもなく本物と断言するのは危ない。部下は時としてウソを報告することもあるからだ。

本件では、文科省と内閣府が合意した特区ワーキンググループの議事録がある。仮に部下がそれと反する報告をあげてきたときには、なぜ食い違っているのか、部下に問いただすべきだろう。