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[ソウル 21日 ロイター] - 米アップル(AAPL.O)がiPhone(アイフォーン)最新機種「8」を年後半に発売すると見込まれる中、世界の電機メーカーはメモリーチップの供給不足に備え、部品確保に奔走している。

世界最大級のメモリーチップメーカーでもある韓国のサムスン電子(005930.KS)やアップルなどは、深刻な影響が出ることはまずない。しかし、業界関係者によると、他のメーカーの中には価格に上乗せしても長期契約を結び、部品確保に乗り出す動きがあるという。

そのほかにも、これまでよりも早い時期に注文を確定させ、在庫の確保に努めるメーカーもある。

韓国のLG電子(066570.KS)は「供給不足を受け、調達決定を前倒しした」とし、部品調達に関する四半期ごとの判断を約1カ月早めたとする声明を公表。安定供給を確保する狙いを強調している。

半導体チップの製造技術はますます高度になってきており、投資コストが拡大する一方で製品の歩留まりは悪化している。その結果チップ価格は1年前と比べて2倍、3倍に高騰している。

機器メーカーの中には、複数の処理を同時に行うのに使うDRAMチップや、長期のデータ保存に必要なNANDチップで十分な供給を確保できず、新製品向けの搭載縮減を迫られるケースもありうる、と話すアナリストもいる。

チップメーカー関係者によると、月ごと、四半期ごとの契約の場合よりも高い料金を支払う代わりに半年間の供給契約を結び、製品の生産に十分なだけのメモリーチップを確保する動きも出ている。

同関係者は「NAND市場の方が影響は甚大だ。NAND市場では、販売数量が多くメモリー容量の拡大にも動いているアイフォーンが引き続き重要な需要源となっているからだ」と打ち明けた。

<供給不足の兆し>

供給不足の影響の兆しが既に一部で現れている。中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]では、フラッグシップモデルのスマートフォン「P10」に最新型ではないチップも使用し製品の性能にばらつきが出たことが発覚して、消費者の批判を集めた。

ファーウェイは、メモリーチップの調達計画についての問い合わせに回答していない。

アナリストによれば、1年間に世界で供給されるNANDチップのうち約18%はアップルが買い付けているという。アップルの新型アイフォーンは9月に発表されることが多いことから、ここ数年、電機メーカーはこの影響を避けようと、年前半に在庫を積み上げてきた。

しかし、今回は年前半のうちにチップ不足が発生したことで、多くのメーカーが慌てだした。

アップルが例年よりも多くのアイフォーンを生産することを選んだ場合や、より記憶容量の大きなモデルの比率を高めた場合には、他のメーカーへの影響はさらに大きなものになり、生産ができなくなる恐れが出てくる。一部のアナリストは、アップルが今年出荷する最新モデルは最大で1億台に上る可能性があるとみている。コーウェンの試算によると16年のアイフォーン7の出荷台数は8230万台。

電子部品販売会社、フュージョン・ワールドワイドのエグゼクティブ・バイス・プレジデント、Tobey Gonnerman氏はチップの供給不足について、「アイフォーン8の発売に関し、顧客や供給業者からは商品不足や配送時間が長くなる理由として指摘されてきている。在庫を積み増すなどして配送上の問題に備える動きはここ数カ月、いよいよ広がっている」と説明している。

チップメーカーはここ数年、投資を拡大しNANDチップの生産増強に動いてきた。サムスンは140億ドルを投じた韓国南部の生産拠点を年内に稼動させるほか、韓国の半導体大手SKハイニックス(000660.KS)も数カ月内にNANDの上位製品の生産を始める見通しだ。

しかし、アナリストは、大幅な供給増加が実現するのは2018年以降になるとみている。

(Se Young Lee記者)

2017年 6月 21日 8:32 PM JST