ニコンは半導体露光装置などで使う産業用レンズ技術をデジタルカメラに転用する。高画素数のイメージセンサー向けに光学性能の高いレンズを開発し、カメラの基本性能を高める。2―3年内をめどに、ミラーレスカメラなどへ搭載を目指す。

スマートフォンの普及によりカメラ市場が急速に縮小し、カメラ事業の改革が急務となっている。中高級機を中心に“王道”の性能を向上させ、ブランド復権を目指す。

ニコンは2月に光学部品の生産を集約し、4月に各事業部に分散していた光学設計機能を集めて光学本部を新設した。
同本部を中心に、産業用レンズで培った設計技術を民生用カメラに応用する。産業用レンズの加工コストは数千万円かかるため、設計技術の要素を取り出し、カメラに搭載できる水準までコストを抑える。

カメラレンズの高性能化を急ぐ理由は、イメージセンサーの高画素化とミラーレスでの差別化だ。最高峰の一眼レフカメラでは2000万画素を超える。
今後、従来のレンズでは、高画素センサーの表現力を十分に発揮できない可能性がある。また、機構がシンプルなミラーレスは競合と差別化しにくい。レンズ性能を高めて、写真表現で差をつける。

同社はカメラ事業の再建に向け、ユーザーが「ニコンらしさ」を感じる基本性能を磨くことに主眼を置いている。
最近は高級コンパクトカメラの発売を中止し、ユーザーの期待に応えられなかった。写真表現を徹底的に磨き、プロや愛好家の支持を固める考え。

一方、高性能なカメラは、一般的に取り扱いが難しい印象もあり、ユーザーが固定化されがちな課題もある。女性だけの開発プロジェクトなどを検討し、ユーザーのすそ野の拡大を図る。

日刊工業新聞2017年7月4日
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