日欧EPA、積み残し分野は難航必至 EU承認に時間、発効は数年後か
7/7(金) 6:43配信 SankeiBiz
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170707-00000502-fsi-bus_all


 大枠合意に至った日本とEUのEPAだが、投資をめぐる企業と進出先国との紛争処理手続きなど折り合いが難しいテーマは決着を先送りしたため、正式合意までは曲折が予想される。28カ国の承認が必要となるEU側の域内手続きも難航する恐れがあり、協定発効までは数年単位で時間を要する可能性がある。

 マルムストローム欧州委員(通商担当)は6月の記者会見で「ISDSは古い(制度)。われわれの見方からすると死んでいる」と述べ、紛争処理をめぐる日本側の主張は受け入れられないとの考えを示した。

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)では、進出先政府の急な制度変更で工場などが損害を被った場合、企業が世界銀行傘下の仲裁機関に訴えられるISDS制度が盛り込まれた。

 日本は今交渉でも同制度の採用を主張する。ただ、欧州側は「企業の訴えで独自のルールや基準が無効にされる」と警戒しており、代わりに新たな常設投資裁判所の設置を要求して意見が対立したままだ。

 常設の投資裁判所は、EUとカナダの包括的経済貿易協定(CETA)に設置が盛り込まれたが、制度の詳細はまだ決まっていない。日本はEU・カナダ間の協議も参考にしつつ、慎重に判断したい考えだ。

 一方、紛争処理手続きを含む全項目で合意しても、EU加盟28カ国すべての批准・承認が終わるまでは一定の時間が必要になる。通商交渉は本来、EUの執行機関である欧州委員会が権限を持つが、英国のEU離脱以降、各国の承認を得るよう求める声が強まった。

 CETAも2013年秋に大筋合意したものの、自由貿易を批判する保護主義的な動きが強まるなか、ベルギーの地方議会の反対で手続きが滞るなど迷走し、まだ発効していない。

 日欧は年内にも残る論点を詰め、EPAの最終合意を目指す。その後、各国の承認手続きなどに移るが、「EUの手続きが難航すれば発効まで数年単位で時間がかかるかもしれない」(通商筋)と懸念する声が既に上がっている。(田辺裕晶)