生活を支援するロボットとの同居が夢の話ではなくなりそうだ。今月末に開かれるロボットの国際競技大会「ロボカップ」では、搭載する人工知能(AI)に特化して性能を競う部門が新設され開発が加速。高齢化社会を支える技術として政府も開発を後押しする。(原田成樹)

頭脳開発に集中

 ロボカップはAIを搭載したロボットの競技大会。2050年にサッカーW杯のチャンピオンに勝つロボットを開発することを目標に日本の研究者が提唱し、1997年に始まった。

 当初はサッカー競技だったが、災害救助や産業支援などに対象を拡大。特に注目を集めるのは今年で11回目となる生活支援競技だ。家庭の台所やリビングなどで活躍する「家事ロボット」を育成する狙いがある。

 会場ではロボットが飲み物の希望を聞いて注文通りに運んだり、食事の内容に応じてナイフや皿などの食器をテーブルにセットしたりする課題に挑み、得点を競う。

 今年の大会は今月27日から名古屋市で開催され、生活支援競技には大阪工業大など日本の9チームを含む計32チームが出場する。昨年まではチームが自作した別々のロボットで競っていたが、今年から共通の機種を使って搭載AIの性能だけを競う部門が加わった。

 共通機種に採用されたロボットはトヨタ自動車の「ヒューマン・サポート・ロボット(HSR)」とソフトバンクの「ペッパー」。スペイン、中国、イタリアなど各国の機種を抑えて選ばれた。

 自作のロボットと違って機械の調整などに時間を割く必要がなく、各チームは「頭脳開発」に集中できる。優れたプログラムは競技後に公開され他チームも簡単に共有できるため、全体の水準が底上げされ、技術が加速度的に進化する利点がある。
囲碁より高度

 AIは最近、囲碁や将棋のトップ級棋士を次々に打ち負かした。原動力となった「深層学習」という新設計法は家事ロボットでも5年ほど前から使われており、言葉や物の特徴を簡単に学習させることができる。

 ただ、現実の世界は囲碁や将棋よりもはるかに複雑だ。目の前を人が横切るなど状況は刻々と変化するほか、「よく冷えた飲み物を」といった不完全な情報にも応えなければならない。

 玉川大と電気通信大の合同チームは昨年の生活支援競技で決勝に進出し、引き出しを開けて中から紙を取り出す高度な作業を披露した。使用したHSRは安全のため力が弱く制御されているが、腕を左右に揺らす工夫で引き出しを開けた。

 また、ロボットにとって薄い紙をつかむのは難しいが、指の背にある空気の吸引孔で吸い付けて持ち上げ、観客を驚かせた。こうした技で4位となり、イノベーション賞に輝いた。

 チームを率いた玉川大の岡田浩之教授は「基本をこなして勝ち進むのも重要だが、決勝では難しいことに挑戦し、面白いアイデアを見せなければ上位に選ばれない」と話す。

 近年は上位を中国とドイツ、オランダが占めており、今年の日本勢はホーム開催とはいえ楽観を許さない。

http://www.sankei.com/smp/economy/news/170709/ecn1707090003-s1.html
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