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【7月11日 時事通信社】イラク政府は10日、過激派組織「イスラム国」(IS)が約3年にわたり支配した北部モスルの完全制圧を正式に宣言した。昨年10月に始まったモスル奪還作戦が結実し、ISの凶行から一般市民を救うという大きな目標に一区切りが付いた形だ。しかし、ISは今もイラク各地に点在する領域で残虐な「恐怖支配」を続けており、イラクの全国民が苦悩から解放される日は見通せない。

 「喫煙が見つかれば、手の指を逆に曲げられて折られた」「携帯電話のSIMカードが見つかれば、死刑」「ヒジャブ(頭部を覆うスカーフ)を着用しないと、石打ちの刑」。モスルの住民からは、ISの残虐行為の証言が多数寄せられる。

 3月にモスルから近郊の避難民キャンプに逃れた主婦サファ・ワリドさん(31)も「ISは爆弾の使い方や、斬首する方法を人形を使って子供たちに教えていた。おなかがすいたら、腹部に石を巻いて我慢しろ、と話していた」と振り返る。「でも、IS戦闘員の妻だけはヒジャブを着けずに化粧していた。彼らのやり方は矛盾だらけだ」と今も憤りが収まらない。

 モスルが陥落した後も、イラクにはモスル西方のタルアファル、南方のハウィジャ、シリア国境のカイムなどにISの支配地域が残っている。こうした場所を合わせると、推計で20万〜30万人程度が今もISの恐怖支配で絶望感を募らせているとみられる。

 アバディ首相は10日の演説で「ISの残党を一掃する任務がまだ残っている」と指摘。米軍主導の有志連合も「イラクの残る全域でISを打倒するため団結する時だ。IS台頭を招いた状況に再び戻るようなことは許されない」と訴え、イラク国内のIS壊滅に全力を尽くす決意を表明した。

 ただ、前途は容易ではない。イラクでの民間人犠牲者を集計するウェブサイト「イラク・ボディー・カウント」によれば、7月に入ってから、タルアファルで247人がISに虐殺されたほか、30人が逃亡を試みて射殺された。ハウィジャでも惨殺された数は60人に達し、ほかにも1人が焼き殺されたという。

 激しい空爆や攻撃にさらされ、追い詰められて支配領域が縮小しても、ISが残虐行為をやめる気配はないようだ。(c)時事通信社

2017/07/11 14:42(イラク)