【バルセロナ=深尾幸生】独アウディは11日、スペイン・バルセロナで旗艦車種「A8」の発表会を開いた。世界で初めてクルマの運転を人ではなくシステムが担う。2017年秋に発売し、18年から段階的に自動運転機能を使えるようにする。10年前は映画のなかの存在だった技術がいよいよ実用化する。


 発表会には04年公開の映画「アイロボット」に登場した自動運転車「RSQ」が登場。アイロボットは35年が舞台。A8はそれを18年に実現する。ルペルト・シュタートラー社長は「A8で新しい時代に入った」と宣言した。

 A8は世界で初めて「レベル3」の自動運転車だ。すでに市販されている「レベル2」はあくまで人が主体。ハンドル操作や加減速などをシステムが実行するが、運転手は常にハンドルを握っておく必要がある。

 レベル3はシステムが主体となる。全ての操作をシステムが実施し、運転手は運転以外の作業をすることができる。システムが介入を求めたときに初めて運転手はハンドルを握る。

 A8はまずドイツで今秋に発売し、世界に広げる。価格は9万600ユーロ(約1千200万円)からだ。

 ドライバーが操作パネルにある「Audi AI」ボタンを押すと、自動運転モードが起動する。運転はシステムが取り仕切り、運転手はその国の法律が許せば10.1型の大型画面でテレビを見たり、メールをチェックしたりできる。

 6個のカメラや5つのレーダーに加え、市販車に世界で初めて搭載されるというレーザースキャナーが検知する周囲の情報を、車載コンピューターが解析する。スペースを見つけて車線変更や突然の割り込みにもシステムが対応する。

 当面は自動運転機能を使える条件は限られる。中央分離帯のある高速道路を時速60キロメートル以下で走行しているときだけだ。しかも法律で明確に認められているのはドイツだけ。通勤時などのやや渋滞している高速道路が想定されている。
この条件を外れるとシステムは運転手に手動での運転を促す。駐車場ではスマートフォンによる指示で自動で出し入れする機能も備える。

 レベル3をめぐっては世界の自動車大手が20年ごろの実用化をめざしている。運転手すら不要の「レベル5」などの完全自動運転では米グーグルや米アップルなどIT大手も参入を狙う。

 人が運転しない自動運転技術が標準になれば、「走りの良さ」といった従来の基準での差別化が難しくなることはアウディ自身も認める。外部との接続性能や内装などこれまでと異なる競争軸の重みが増すことになりそうだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC11H1F_R10C17A7000000/?dg=1&;nf=1