■資金がショートする

大西 ポイントはWDが提訴した米裁判所が結果を出す7月14日。ここで売却自体が差し止めになる可能性は十分にあります。

そうなれば、得られるはずだった2兆円が入って来なくなるので、銀行は東芝を破綻懸念先にするでしょう。借り換えにも応じられず、新しいカネも入れられなくなる。

磯山 すると、貸しているおカネの期限が来る度に、そこで資金がショートしてしまう。

大西 東芝の経営は、一気に緊迫しますよ。それはもう、東芝は今月の給料をどうしようというレベルになるでしょう。

なんといっても5兆円企業で約19万人の社員がいるわけで、そうした人たちの人件費から、日々の様々な固定費、資材調達など会社を回すための日銭がショートする可能性が出てくる。極端に言えば、いつ潰れてもおかしくない状態になる。

磯山 昨年に東芝がメディカル子会社を売却した時も、相当危なかったと言われています。当時は買収する側のキヤノンから、公正取引委員会への計画届け出前にカネを支払ってもらうなど、通常では考えられないことをして資金繰りをつけた。

大西 そうして東芝が売却先を決められないうちに、半導体子会社の価値が失われていくリスクも出てきます。専門家に言わせれば、東芝の半導体技術はすでに韓サムスンの周回遅れで、ここから1兆円規模の投資をしないとキャッチアップできない。

売却交渉に手間取って投資が疎かになっている間に、すでに「2兆円」の価値を失っている可能性もあるわけです。

磯山 シャープが台湾の鴻海精密工業に買収された時も、その過程で偶発債務が見つかったとして、当初言っていた買収額より1000億円も安く買い叩かれましたね。

大西 メディアはいつも「これで決定」という風に書きますが、まだなにも決まっていないということです。

(以下省略、つづきはウェブで!)