【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」
「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

■『精神医療ダークサイド』(佐藤光展著、講談社現代新書)
■『なぜ日本は、精神科病院の数が世界一なのか』(織田淳太郎著、宝島社新書)

両著の報告する日本の精神医療の現状は、社会による監視を欠いたパノプティコンが
生み出す暗い側面を余すところなくあらわしている。診断に第三者が口を挟むことに
医師は抵抗するものだが、精神疾患は病態に客観性が伴わないぶん、
医師の裁量は一段と拡大しやすい。
拍車をかけるのが金(カネ)の問題である。日本の精神病床の9割が
民間病床であり、民間病院はなんとしてでも病床を埋めようとするものである。
公営であればよい、とは評者は思わないが、人身の拘束を伴う精神医療を
民間が担う以上、そこにどう公の規律を課すかという問題には答えられねばならない。
事態をさらにむつかしくするのが、その民間施設が政治的な声をもちはじめることである。
経済官庁(課長級)