不法滞在などによって国外退去を求められている外国人について、イラン、トルコの中東2カ国の大使館が旅券発給を拒否していることが判明した。関係者によると、この措置で日本にとどまる両国出身者は数百人に及ぶ。日本にとどまるために虚偽の難民申請を行う「偽装難民」の存在が問題視される中、外国人受け入れのあり方が問われそうだ。(安里洋輔)

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 「本人が望まないから帰国させないという対応は、棄民も同然だ」

 イラン、トルコ両大使館が日本側の要請を無視して旅券の発給を拒んでいる問題について、法務省幹部はこう語る。送還の手続きができないまま日本にとどまる数百人の多くが、全国の入管収容施設に収容されたままになっている。

 法務省によると、査証の期限が切れるなどして不法滞在が発覚し、入管の収容施設に収容されている外国人は1340人(6月14日現在)。このうち約3割が、国外退去を拒否して収容施設に6カ月以上収容されており、「収容期間の長期化が常態化している」(法務省関係者)という。

 今年5月には、東京と名古屋の入管の収容施設で、最大約100人の外国人が、処遇改善などを求めるハンガーストライキを決行した。彼らが最も強く抗議していたのが、「仮放免者」の再収容をめぐる入管側の対応についてだ。

 施設収容の外国人の中には、難民申請の手続きや国外退去処分の取り消しを求めて訴訟を起こす者もいる。入管側はそうした人々に対して、収容を一時的に解く「仮放免」の措置を取っている。

 法務省によると、日本に滞在する仮放免者は昨年末時点で3555人に上るという。ハンストを行った外国人らは、入管側が最近、この仮放免者の再収容を頻繁に行っているとして対応を改めるよう求めた。

 一部の市民団体などがこの主張に同調し、仮放免者の支援に当たっているが、問題も指摘されている。法務省関係者は、「仮放免者の中には、日本に滞在し続けるための手段として難民申請する“偽装難民”が少なくない」と説明する。

 関連する事件も起きている。警視庁は5月、都内のビルメンテナンス会社の経営者(75)を入管法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕した。警視庁によると、この経営者は昨年10月〜今年4月、難民認定申請中のミャンマー人13人を江東区のホテルに清掃員として派遣した疑いがある。難民認定制度では申請から半年が経過するまでは就労が認められておらず、13人はその期間中だったという。

先の法務省関係者は、「国外退去処分を受けて後がなくなった外国人にとって、仮放免は“第2の在留資格”と同義のものになってきている」と指摘。その上で、処分を受けた自国民の旅券発給を拒否する2カ国の対応について、「相手国の協力が得られないままだと、『不法滞在になっても帰国せずに済む』という誤った認識が広まる恐れがある」と話している

http://www.sankei.com/smp/affairs/news/170713/afr1707130014-s1.html