日本病理学会の調査

国内の病理解剖数の推移
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患者の死亡後に行う「病理解剖」の実施件数が、最近30年間に全国で7割以上も減っていることが、日本病理学会の調査で分かった
医師の多忙や病院の費用負担が理由とみられる。診断・死因の確定や治療効果の確認、新人医師の育成に欠かせないため、医療の質低下への懸念が広がっている。同学会などは詳しい実態調査に乗り出した。

病理解剖は、死体解剖保存法に基づいて行われる。義務ではなく、医師が必要と考えれば遺族の承諾を得て行う。特に、先端医療を実施した際に効果を確かめるのに大切で、副作用が確認されれば改善につながる。
同学会によると、1980年代は全国で約4万件行われたが、90年代から減少し、2015年には1万1061件に減った。

遺体の組織などを詳細に調べるには、死亡後すぐに解剖することが重要だ。それが敬遠されるのは、医師が普段の治療や月数回の当直勤務に追われながら、解剖すると報告書の作成などの事務作業もしなければならないから。
病院は1件の費用約25万円を全額負担するため、同学会の幹部は「収入にはつながらず、避けたがる病院もある」と語る。
この結果、病理解剖の立ち会いが必修とされる若手医師の初期臨床研修にも支障が出るとの指摘もある。

「年間10件が精いっぱい。解剖の重要性は分かっているが、医師が多忙でエネルギーが残っていない」。甲府共立病院(甲府市)の西山敦士・内科科長は現場の声を上げる。
昨年は同病院で約230人が死亡したが、解剖は数%しかできなかったという。

日本内科学会で臨床研修制度を担当する横山彰仁・高知大教授は「治療中に行ったCT(コンピューター断層撮影装置)などの画像診断では、全て分からない場合もある。
医師を育てるためには解剖が必要だ」と指摘する。全国1200病院で実態調査している日本病理学会の深山正久理事長は「原因を探り、減少に歯止めをかけたい」と話した。【渡辺諒】

配信 2017年7月31日 07時30分(最終更新 7月31日 08時09分)
毎日新聞
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