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赤ちゃんに耳が聞こえないなどの聴覚障害がないか調べるため、国が自治体にすべての赤ちゃんを対象に実施を求めている検査について、日本産婦人科医会が全国調査を行った結果、昨年度、回答があった施設だけでもおよそ10万人の赤ちゃんが検査を受けていなかったことがわかりました。聴覚の障害は早期に見つけて治療を始めれば影響を小さくできることから、産婦人科医会は自治体に対し早急な対応を求めています。

生まれたばかりの赤ちゃんに聴覚の障害があるか調べるため、国は全国の市町村に対してすべての赤ちゃんを対象に聴覚検査を実施するよう求めています。

日本産婦人科医会は全国およそ2400の分べんを扱う医療機関を対象に昨年度の聴覚検査の実施状況を調査し、およそ76%の施設から回答がありました。

その結果、回答があった施設で生まれた赤ちゃん73万4000人余りうち13.5%に当たるおよそ10万人の赤ちゃんが検査を受けていなかったことがわかりました。特に北海道、神奈川県、京都府、香川県、千葉県、東京都では20%を超える赤ちゃんが検査を受けていませんでした。

日本耳鼻咽喉科学会によりますと、聴覚に障害がある赤ちゃんは1000人に1人から2人の割合でいますが、早期に発見して治療を開始すれば言葉の発達の遅れが最小限に抑えられ、生活への影響が小さくできることから赤ちゃんの時の検査が非常に重要になるということです。

聴覚検査の費用について、国は市町村に地方交付税交付金として渡していることから、公費で負担するよう求めていますが、実際には平成27年度の時点で費用を補助している市町村はわずか6.8%にとどまっていました。

日本産婦人科医会の関沢明彦常務理事は「およそ10万人の赤ちゃんが検査を受けていない深刻な実態が初めてわかった。市町村は検査費用を補助する制度を整えるなど、早急に対策すべきだ」と話しています。

新生児の聴覚検査とは

新生児の聴覚検査は生まれた時から耳が聞こえにくい赤ちゃんを発見するための検査で、国は全国の市町村に対して原則として生後3日以内のすべての赤ちゃんを対象に実施するよう求めています。

検査は、赤ちゃんにヘッドホンから数分間、小さな音を聞かせ、額やほおに貼った電極で脳波の変化を見て耳が聞こえているか調べます。
検査は基本的に出産した施設で実施され、異常が疑われる場合は耳鼻科で精密検査が行われます。

日本耳鼻咽喉科学会によりますと、生まれた時から聴覚に障害がある赤ちゃんは1000人に1人から2人の割合でいて、遺伝子の変異やウイルスの感染などが原因とされています。
聴覚障害がある場合には生後半年以内に補聴器をつけるほか、症状が重い場合は耳の中に音声を電気信号に変換する「人工内耳」を取り付ける手術などが行われます。

日本耳鼻咽喉科学会の理事で東京大学の山岨達也教授によりますと、声を言葉として認識する脳の神経回路は5歳ごろまでに基礎が形成されてしまうため、聴覚障害の発見が遅れてよく聞こえないまま成長すると、その後に音が聞こえるようになっても言葉を聞き取ったり話したりすることがうまくできず、ふだんの生活への影響が大きくなることが分かっています。

厚生労働省の研究班が「人工内耳」の手術をした子どもたちを対象に調査した結果では4歳から6歳の間に手術を実施した子どもたちは、1歳から2歳半の間に手術した子どもたちと比べて、小学校入学時の聞き取り能力がおよそ40%低かったということです。
こうしたことから国は聴覚障害は早期に発見して治療を開始することが望ましいとしています。

山岨教授は「症状の重い子どもでも早く対処すれば普通に会話し、一般の小学校に通学しているケースも多い。早期に発見するための極めて重要な検査だ」と話しています。
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8月4日 18時13分