大阪市は10日、市を存続したまま現行24行政区を再編し、一般市並みの権限を持つ「総合区」制度について、市から区に移管する事務や組織体制などの詳細な制度案を決定した。市役所本庁から総合区に子育て支援や道路の維持管理など住民に身近な事務を移管し、職員規模や区長の権限を拡充する。議会での議論を経て、今年度内に最終案をとりまとめる。

 ■身近な事務集約

総合区は、市を廃止して独立した自治体(特別区)に再編する「大阪都構想」の対案として、公明党などが導入を主張。吉村洋文市長は「両方のベストな案を作り、市民に判断してもらいたい」として都構想と並行して検討を進め、24区を8総合区に再編する区割り案を3月に公表していた。

詳細案では、現区役所で実施している行政サービスに加え、住民生活に密接する事務を市役所本庁から総合区へ移すと明記。具体的には、民間保育所の設置認可▽スポーツセンターなどの運営▽道路・公園の維持管理−などを挙げている。

移管によって市と区の間の連絡調整の手間がなくなり、「区の実情に応じた迅速で細やかな対応が可能になる」(市担当者)と見込む。また、市長は全体の視点からの政策に集中して取り組むと想定している。

 ■地域ニーズ反映

市本庁と区役所の職員配置も変更し、現在は4800人いる区役所の事務系の職員を、総合区では7千人規模まで増やす。総合区長は市長や副市長と同じ特別職とし、区役所内で柔軟な人事配置を行うことができる権限(職員任免権)が与えられる予定だ。

財政面では、現在の行政区長が自由に使える予算は市全体で82億円(平成28年度)だが、市は総合区に移行した場合、226億円に拡大すると試算。住民らが総合区長に意見を述べる協議体を設けるほか、総合区長には市長の予算編成に要望ができる権限を与える方針だ。

費用面では、初期コストが庁舎やシステムの改修経費など約65億円、移行後もシステム維持などに必要な運用経費として年間約1億円を見込む。

 ■議決時期は未定

総合区への移行は議会の議決で可能。移行時期は議決から約2年後を見込む。ただ、吉村市長と松井一郎大阪府知事が来年秋の実施を目指している都構想の住民投票との兼ね合いもあり、議決時期は未定。

住民投票の後に議決するのか、先に基本方針を定める「2段階方式」にするかなど、手続き論をめぐる駆け引きも繰り広げられそうだ。

□市民生活への影響は

総合区を導入した場合、市民生活にどのような影響があるのだろうか。

大阪市が昨年実施した住民説明会では、「地域コミュニティーがなくなってしまう」との意見が多かった。これを踏まえ、詳細案では、総合区への移行後も現行24区を総合区内の「地域自治区」として位置づけることを明記。同自治区単位で総合区長へ要望などを伝える協議体「地域協議会」を作ることを検討している。

また各総合区の中で、交通の利便性や庁舎の広さなどから現区役所のうち1カ所を「総合区役所」として選定したが、他の区役所も「地域自治区事務所」として窓口機能を残すことで、住民票の写しや戸籍関係の書類交付、国民健康保険などの手続きは現在と変わらず行えるとしている。

一方、各総合区の名称は決まっていない。移行決定後に条例で正式名を定めることになっているが、市民から名称を公募するかどうかなどの手続き面についても未定という。

さらに、住所表記は現行のままとはいかなそうだ。市は「大阪市」の後は総合区名、さらに後の住所については現行の区名と町名を組み合わせる形を検討。移行が決まった後に住民説明会などを開いて具体案を決める方針だ。

総合区に移管される主な事務
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大阪市の総合区制度の詳細案
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配信2017.8.10 12:21更新
産経WEST
http://www.sankei.com/west/news/170810/wst1708100040-n1.html