この記事は具体的。



出口戦略の問題は「日銀の債務超過」ではない 5月19日

金利上昇に伴う日銀の“危機”が指摘されている。
出口では金利が上がるので、日銀の保有する資産に評価損が発生する。
黒田総裁は5月10日の衆議院財務金融委員会で「長期金利が1%上昇したら、日銀が保有する国債の評価損が23兆円程度になる」と答えた。
これは日銀の自己資本6兆円を上回るので、17兆円の債務超過になる。
これを「日銀が倒産する」などと騒ぐメディアもあるが、本当だろうか。

長期金利が2%ぐらいになることは十分ありうるが、そのとき日銀は約40兆円の債務超過になる。
河野太郎氏など自民党の行政改革推進本部が4月に出した?「日銀の金融政策についての論考」は、そういう事態への懸念を表明している。

「国債神話」が終わると何が起こるか
金利が上がると日銀が債務超過になる可能性は想定されており、大事件になるとは考えにくい。
問題は民間銀行である。金融機関の合計(ゆうちょ銀行を除く)で約100兆円の国債を保有しており、特に地方銀行と信用金庫の合計がメガバンクとほぼ同じだ。

融資先の少ない地方金融機関にとっては、1000億円貸し出せる企業はまずないが、国債なら1000億円買えば、金利0.1%としても1年で1億円の利益が出る。
国債は日銀が利益を保証してくれる、ノーリスクの魅力的な投資なのだ。

銀行が信じているのは、国債価格が下がることはないという神話である。
これはかつて地価が下がることはないと信じられていた「土地神話」と同じだが、国債は日銀が買い支えているので「国債神話」はさらに強力だ。

これが日銀が出口を出られない原因である。国債の買い支えをやめると、銀行は値下がりを恐れて国債を売る。
金利が1%上がると、5兆円以上の評価損が発生するので、債務超過になる銀行が出るだろう。

このとき自己資本の少ない地銀や信金で取り付けが発生すると、全国に波及するおそれがある。
現代の取り付けは、銀行の店の前に客が並ぶという古典的な形では起こらない。
それは企業が大口定期預金を引き出すという形で、静かに起こるのだ。
特に今はペイオフで1000万円以上の預金は保証されないので、大口の顧客ほど早めに引き出す。

要する金利が上昇すると、土地神話の崩壊した1990年代と同じような(もっと大規模な)金融危機が起こるおそれが強い。

しかも資本注入の財源は国債で調達するしかないので、金利がさらに上昇する。
通常は金利上昇で物価は抑制されるが、こういう状況で金利が上がると財政赤字が増えるので財政インフレが起こり、それが金利上昇を呼ぶスパイラルに入るおそれがある。
https://news.biglobe.ne.jp/economy/0519/jbp_170519_5413085315.html