群馬県内の美術館で展覧会場の撮影を認める動きが広がっている。ソーシャルメディアの普及を背景に、展示を撮影し、インターネットで共有したいと考える来館者が増えているためだ。自作のネット公開に積極的な作家が増え、著作権の許諾が得やすくなったのも要因の一つ。各館は写真投稿の拡散による集客増を期待しつつ、撮影マナーの周知に頭を悩ませている。

◆インスタ映え
 ハラミュージアムアーク(渋川市)は、現代美術作家の鬼頭健吾さん(40)=高崎市=の企画展会場に限り撮影が可能だ。カラフルな発光ダイオード(LED)を配した作品は、写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿すると受けそうな被写体を指す“インスタ映え”する作品。既に数多くアップされ、投稿を見て訪れた来館者も多く、ネットの口コミが集客につながっているという。

 上毛新聞社が県内の主な美術館8館に「撮影可能な展覧会を開催したことがあるか」を聞いたところ、いずれも「ある」と回答した。そのほとんどが現代美術の展覧会。美術館が展示撮影を許可する場合、著作権者である作家の許諾が必要だが、現代作家は物故作家に比べて許諾を得やすく、特にデジタル世代の若い作家は自作のネット公開に抵抗感が少ないという。

◆多いメリット
 ろうけつ染め作家の大竹夏紀さん(35)=富岡市出身=は、作品や制作過程をブログで公開し、ほとんどの展覧会は撮影OK。「展示撮影にはメリットしかない。例えネットでも多くの人に作品を見てほしい。投稿写真をきっかけに展覧会に訪れ、染絵の魅力を知ってもらえれば理想的」と大竹さん。県立日本絹の里(高崎市)で来月開く2人展も、大竹さんら作家の希望で撮影可能となった。

◆マナーを周知
 展覧会のPRにソーシャルメディアの存在感が増す中、来館者への撮影マナーの周知が課題になっている。県立館林美術館(館林市)は昨年秋、写真撮影が可能な現代美術の展覧会を開いた。だが、禁止された動画撮影を行った来館者がいたため、一部を除いて撮影禁止に変更した。

 動画撮影されたのは映像作品で、多くの美術館は著作権保護を理由に動画撮影を禁止している。同館は「ソーシャルメディアの集客効果は無視できない。今後は禁止事項の周知や監視体制を工夫し、来館者の満足と作品保護とのバランスを取りたい」としている。

《展示会での注意点》使用禁止用具や可能な場所の確認を
 作品を撮影する場合は、まずどの展示が撮影可能か館内表示や案内図で確認する。アーツ前橋(前橋市)で開催中の企画展「コレクション+ アートの秘密」は入り口に「撮影OK」の看板があるが、撮影不可の展示も一部、混在している。撮影不可のマークがある場合、その作品が映り込まないよう構図に気を配る必要がある。

 展示作品を守るため、フラッシュや自撮り棒、三脚は使用禁止が多い。実際に海外の美術館では、自撮りしようとした女性が展示品を倒す事故が起きた。

 狭い展示室ではカメラのシャッター音が響き、他の来館者が不快に感じることもある。撮影に集中するあまり、周囲の迷惑にならないよう気をつけたい。(和田早紀)

カラフルなLEDが浮かび上がる鬼頭さんの作品。“インスタ映え”する美しさに、カメラを向ける来館者も多い=ハラミュージアムアーク
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アーツ前橋の企画展で混在する「撮影OK」の看板(上)と撮影不可の看板(下)
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配信2017年8月15日(火) AM 06:00
上毛新聞
http://www.jomo-news.co.jp/ns/2915027191261773/news.html