■食いだおれの街・大阪を体現する「黒門市場」。そこに、ある変化が

外国人観光客にわかりやすいように、横断幕によって「フリーwi-fiの無料休憩所」や「トイレ」を案内。よく見ると、手荷物預かりや外貨両替機もあることが示されている
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■プロの料理人から外国人観光客まで訪れる商店街

“食い道楽”と称されるように、浪花っ子は食へのこだわりが強い。

「黒門市場」と言えば、戦前から続く大阪ミナミの台所。難波から歩いて5分の商店街は、鮮魚や精肉をはじめ日用品や飲食店などおよそ180の店が軒を連ねる。年の瀬、手にいっぱいの買い物袋を抱えた人でにぎわう光景をテレビで目にしたことがあるかもしれない。また、NHK朝の連続テレビ小説のロケ地になったことでも知られる。

古い書物『摂陽奇観』によると、文政5〜6年(1822年〜3年)の頃より「毎朝、魚商人、この辺に集まりて魚の売買をなし、午後には諸方のなぐれ魚を持ち寄りて、日本橋にて売り捌くこと南陽の繁昌なるや」と記されている。これが、黒門市場の起源であると言われる。『黒門』の名は、明治末期まで市場の近くにあった寺院の山門が黒塗りであったことに由来する。

昔から黒門市場は、地元の人からプロの料理人も仕入れに行く“庶民的な市場”として親しまれてきた。だが、飲食店の衰退や相次ぐ食品スーパーの出店などにより、客足が減って苦しい時代が続いた。

しかしここ数年で大きな変化を遂げ、外国人観光客が集まる活気のある市場となっている。商店街を歩くと、威勢のいい大阪弁と片言の英語で接客する姿が目に入り、道行く人の半数以上が外国の旅行者であることがわかる。商店街にいったい何があったのだろうか?

黒門市場商店街振興組合の理事長・山本善規さん、副理事長・吉田清純さんにお話をうかがってきた。

■「ええもん、ほんまもん」が味わえる食べ歩き天国

左上:商店街でよく目にする外国人向けのパンフレット『エクスプローラー』右上:総合インフォメーションセンター。休憩スペースのほか、大阪限定の手土産なども販売する 
左下:カレー店『ニューダルニー』にて。訪日客の質問に店主の吉田清純さんがなめらかな英語で応える 右下:マグロ解体ショー時は人だかりができる『まぐろや黒銀』
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黒門市場では、何でもその場で味わえる“食べ歩き”が訪れる外国人観光客にうけている。

食べ歩きといっても、この商店街のスケールは違う。高級食材の河豚(ふぐ)の刺身「てっさ」、鮪トロ、生カキ、ほたて貝の天ぷら、焼きたての神戸牛などが店先に並ぶ。外国人らしき女性2人がウニを箱買いし、まるでアイスクリームを食べているかのように小さなスプーンで味わう姿もあった。

「外国人は日本食に強い関心を持ち、安心しておいしく食べられるものを求めているんですよ。自国に持ち帰ることが難しい刺身や寿司、甘いフルーツなんかも人気。しかも、高いものから売れていく」と、山本理事長。さすが大阪商人。観光客の「価値あるものにはお金を惜しまない」という傾向に気づき、商店街をあげて“ええもん、ほんまもん”が味わえる食べ歩き天国をつくった。

「インバウンド受け入れのきっかけは8年ほど前、組合の理事会で中国に支店をもつ鮮魚店の店主が『これからは中華圏の人々が多くなる。その時組合として、いかに多言語対応をされるのか?』と提言されたことからでした」(山本理事長)

商店街振興組合として、まず外国語表記の横断幕や日本的な提灯の設置をおこなう。また、2013年からは大阪市の補助金を原資に「黒門市場特集」のパンフレットを発刊。日本語だけでなく、多言語パンフレットをつくり近隣のホテルや宿泊施設にも配布するようになってから、目に見えて訪日客が増えていった。効果が大きいことから、現在は組合の自主財源と掲載広告のみでパンフレットの発行を継続する。

>>2以降に続く

配信 2017年 08月15日 11時05分
LIFULL HOME'S PRESS
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