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■SNSによるクチコミが黒門への関心を高める

黒門市場の強みは、振興組合がしっかりと連携し団結していることにある。

2013年にゆるキャラ「もおんちゃん」が生まれ、同年12月、市場内の空き店舗を組合で購入し外国人観光客向けの無料休憩所をオープン。2016年には、国の補助金を得て『黒門インフォメーションセンター』に拡充させた。このセンターは、フリーWi-Fi設備、外貨両替機、手荷物預かり所(有料)、ゴミ箱、2階にトイレなどを設置。しかも、英語や中国語が話せるスタッフによる案内も行っている。2014 年からは接客にあたる店主やスタッフ向けの英会話教室をはじめた。

「センターの役割は大きいですよ。お客さんが座ってくつろぐばかりか、買ったものを食べたり、これから欲しいものをスマートフォンで調べたりする。またSNSを使って、美味しかったものやおもしろい体験をすぐさま投稿したいというニーズにも応えています。このクチコミ効果は絶大。言わば、来ているお客さんが世界に向けて情報発信してくださっているわけです」(吉田副理事長)

インバウンド対応が細やかなのは、2012年以降、毎年行われている外国人対象のアンケート調査によるところが大きい。同センターに語学の堪能な調査員が駐在し、2017年4月度のアンケートでは1,043件もの回答を得ている。

調査によると、黒門市場を知ったきっかけの一位は「インターネットで調べて」(561件)
二位は「友人や知り合いから教えてもらった」(343件)、三位は「ガイドブックなど」(256件)

また黒門市場の印象を尋ねると、一位は「食べ物がおいしい」(643件)二位は「日本的な印象がした」(409件)「食べ歩きが楽しい」(360件)という結果だ。※2017年4月1日〜15日 黒門市場調べ

また、アンケートで得た要望から、外国人観光客の「食の好み」を分析し、気軽に食べ歩きできるよう串焼きにしたり、イートインや店先で食べられるテーブルを置いたりといった工夫を重ねる。

「外国人のお客さんは表現がとても豊かですね。当店のカレーを食べても、日本語でオイシイと言ったり、ナンバーワン!と親指を立ててくれたりします。うれしくて、自然と笑顔になりますよ。英語で商品説明したり道案内することも、おもてなしの一つだと思っています」と、朗らかな吉田副理事長。「英会話のできる商店街」をめざし、それぞれが自発的に英語でのコミュニケーションを図っている。

■外国人観光客と地元のお客さんが共存する市場へ

訪日外国人でにぎわう商店街の悩みは、従来の得意客であった人の足が遠のきがちになっていることだ。

「黒門では混雑でゆっくり品定めができないと、これまでのお客さんが離れてしまっている問題があります。本来、市場を支えてくれてきたのは地元の人らです。私はここで店を構える漬物屋『伊勢屋』の4代目。今は6代目が継いでいますが、昔は白衣を着た板前さんが早朝から仕入れにくる姿が目立ち、昼前になると買い物袋をさげた主婦が訪れるのが日常だったんです。個人の思いとしては、古き良き時代の光景を呼び戻したい。今も『まってるで』と声をかけてくれる日本のお客さんがいっぱいおるんです」(山本理事長)

黒門市場では今年を原点回帰の元年と位置づけ、地元のリピート客へのアプローチを検討中である。現在、「スタンプ事業委員会」が中心となり、お買い物ごとにポイントがたまり金券で還元する仕組みを復活させたいと考えている。なかでも地元客向けの店舗には、ポイント率をアップするなどの利点をつけたいそうだ。

「観光立国を掲げる日本、もちろん訪日のお客さんは大切です。一方、外国人がおらんようになったら、どないするんやという声もある。これまでのインバウンド対応で一定の成果は得たけど、地元のお客さんや日本人の観光客も並行して呼びこんでいきたい」と、山本理事長。 最近のマスコミ報道で市場に関心をもち、はじめて訪れる日本人の若者が増えているのだと言う。

活気が活気を呼ぶ黒門市場。時代の変化に対応する商店街として、これからもにぎわいを創出し、楽しませてくれるのだろう。