虐待死見逃すな 1280人死因再分析 千葉大など5年分県内全未成年者
東京新聞:2017年8月16日 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201708/CK2017081602000250.html
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 見過ごされた子供の虐待死などがないかを把握しようと、千葉大と千葉県が、二〇一二〜一六年の五年間に県内で死亡した全ての未成年者、約千二百八十人の死因を再分析する調査を始めることが十六日、千葉大などへの取材で分かった。
一八年度末をめどに結果をまとめる。

 国の死因集計は実態を反映していないとの指摘があり、再分析結果を集計体制改善への提言や児童虐待防止につなげる狙い。
千葉大の岩瀬博太郎教授(法医学)は
「防げる子供の死を少しでも減らしたい」と話す。死因の再分析を、県の規模で抽出ではなく全例で実施するのは珍しいという。

 児童虐待による死者数に関し日本小児科学会は、一部自治体で一一年に死亡した十五歳未満の事例を独自分析し、全国で約三百五十人と推計。
一方、一一年度の厚生労働省の集計は全国で九十九人(十八歳未満、無理心中を含む)と数字に開きがあることから、同学会は「多くの虐待死が見逃されている恐れがある」として、国に対応強化を求めている。

 千葉大などは再分析で、死亡診断書を基に作成された死亡票などを調べる。
解剖所見があれば照合して死亡の経緯までさかのぼり、虐待疑いの有無や疾患の見逃しがなかったかなどを点検する。

 取りまとめた再分析結果は、児童虐待防止の関係機関に提供して対応に役立ててもらうほか、同様に死因再分析に取り組む自治体があれば、手法などの提供も検討する。

 厚労省が人口動態統計をまとめるのに使う死亡票は同省で厳しく管理されているが、千葉県は虐待死削減などを目的に開示を申請し、七月下旬に認められた。

 岩瀬教授は、虐待死などの正確な集計には死亡票や死亡診断書の適切な作成が重要とする一方、「記入が十分ではないケースもあるだろう」と指摘する。
具体的には、解剖せずに診断してはならないとされる乳幼児突然死症候群(SIDS)を解剖なしで死因欄に記載したり、虐待死が疑われるのに記入しなかったりした例があるという。

 <死亡診断書> 人の死を医学的、法律的に証明するため、医師が死亡日時や場所、死因などを記入して遺族に交付する。
火葬の許可を得たり戸籍を抹消したりする際に必要。
国の死因統計の資料にもなるため、厚生労働省は医師らに向けマニュアルを出して適切な記入を求めている。
診療中の疾病ではない外因死などの場合は死体検案書とし、詳しい状況なども書く。