切り札「電話に出ないで」 ニセ電話詐欺、留守電活用で未然に防止
東京新聞:2017年8月28日 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201708/CK2017082802000232.html

高齢者宅を戸別訪問しニセ電話詐欺防止を呼びかける向島署の竹平巡査長=東京都墨田区で
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 相次ぐニセ電話詐欺に手を焼いている警視庁は、警察官がお年寄りの家を訪ね、電話に出ないよう求める作戦に出た。
詐欺グループの手口が巧妙で「高齢者をパニックに陥れ、正常な判断を失わせる。電話に出るとだまされてしまう」(警視庁幹部)からだ。
自宅の電話を常に留守番電話にし、用件を確認した上で折り返すよう呼び掛けている。

 「犯人からの電話に出ない!」と書かれたチラシを、向島署地域課の竹平真志(しんじ)巡査長(27)が、墨田区内の男性(80)宅を訪ねて手渡した。
男性は孫ほどの年齢のお巡りさんに「不審な電話がかかってきたことがあったよ」と明かした。

 「留守電を活用したり、自動通話録音機をつけてください。犯人は警戒して、電話を切りますから」と竹平巡査長。
録音機は電話を受けた方の呼び出し音が鳴る前に、かけてきた側に、「通話内容を自動録音します」との警告メッセージを流し、通話を録音する仕組み。
録音されれば証拠が残るため、犯人はほぼ間違いなく電話を切るという。

 署管内では昨年一年間で二十一件のニセ電話詐欺が発生。
今年は一月からの四カ月で十六件と多発したため、五月から戸別訪問を始めた。
制服の署員十六人が手分けして、最初の一カ月で計三千三百軒余りを訪ねた。
管内にあるすべての高齢者世帯を回り切れないので、昼間在宅している世帯を中心に四千七百軒以上を訪ねる予定だ。

 「キャッシュカードを他人に渡さない」「現金自動預払機(ATM)で還付金は受け取れない」−。
警視庁はこれまで詐欺の手口を周知し、「電話を受けても、だまされない対策」を続けてきた。
だが、今年七月までに都内で発生したニセ電話詐欺は、前年同期に比べ八百六件多い千八百三十四件(未遂を含む)。
九年ぶりに年間三千件を突破する勢いだ。

 犯罪抑止対策本部の担当者は「他の署でも高齢者宅への戸別訪問を始めており、電話に出ない対策を広めたい。電話に出ることが危ない時代なのだ、と認識する必要がある」と話している。