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[ロンドン/ニューヨーク 25日 ロイター] - 投資家の間で為替リスクの回避が可能な上場投資信託「為替ヘッジ型ETF」の人気が高まっている。外為市場でユーロやドルなど主要通貨の値動きが大きくなっているためだ。

外国人投資家は通常、為替ヘッジを付けずに株式を購入する。一般的に株式は為替と負の相関を持つためで、実際のところ株式投資は為替の急変動をヘッジする側面を持つ。

しかし株式市場の多くが過去最高値近辺で推移する一方、今年に入って主要通貨の変動率が10%台に達したことで、投資家は安全策を採り始めた。

為替ヘッジ型ETFは、今年は7月末までの資金流入が全世界で約170億ドルとなり、91億ドルの流出だった前年同期から状況が一変した。

為替ヘッジ型ETFは比較的新しい金融商品で、業界団体のETFGIによると株式ETFの運用資産総額3兆3000億ドルに対して為替ヘッジ型の運用は1270億ドルにすぎない。

しかしこのタイプのETFの重要度の高まりは、為替変動がポートフォリオのリターンに影響を与え得るということを示している。

JPモルガン・アセット・マネジメントのマーク・リチャーズ氏は「ある株式市場の世界的な指標に対する相対的なパフォーマンスは、その国の通貨の動きに大きく左右される」と話す。

例えば米投資家のMSCI欧州株指数の年初来のリターンはドル建てでは15.5%だが、ユーロ建てでは3.2%になってしまう。

ETFを扱っている業者によると、為替ヘッジ型商品への資金流入は外為市場で相場が大きく変動した直後や、投資家のポジションが一方向に大きく傾いたときに増えることが多い。

例えばユーロは今年に入って対ドルで12%強上昇し、G10通貨で最も上げ幅が大きい。為替ヘッジ型の欧州株ETFへの資金流入は1─7月で13億ドルとなり、92億ドルの流出だった前年同期から流入に転じた。

UBSパッシブ型・ETFファンド欧州ヘッドのサイモン・ロスティ氏は「多くの顧客がユーロヘッジ型商品に向かい始めた。この流れは今後数カ月続くだろう」と述べた。

ユーロの変動をヘッジするETFは、フランス大統領選を巡る懸念が後退した4月の流入が6億3800万ドルとなり、3月の600万ドルから急増した。

為替ヘッジ型ETFは追加コストが必要だが、投資家は特に市場のコンセンサスに偏りが生じているときには、ヘッジ型商品は有効だとみなしている。

もっとも、一部の投資家は、国際的に業務展開する大手企業は為替変動から自らを守るべく様々な手段を講じているとして、為替ヘッジ型ETFに対する懐疑的な見方を変えていない。

INTL・FCストーンのグローバル・マクロ・ストラテジー部門ヘッド、ビンセント・デルアード氏は「為替ヘッジ型ETFを買うのは、既にヘッジを掛けている企業の為替リスクにさらにヘッジを掛けることだ。ヘッジの二重掛けは余分な手数料を発生させるだけだ」と指摘した。

(Helen Reid、Saikat Chatterjee、Trevor Hunnicutt記者)

2017年 8月 28日 7:02 PM JST