■謎の多いメルケル首相2
メルケル首相は、ドイツ初の女性首相だ。それ自体はそんなに珍しいことではないが、メルケルの場合、政治の道に進む前は物理学者をやっていたり、東ドイツ出身だったり、珍しさがいくつか重なって個性的な首相になっている。

マスコミなど表舞台に出る役職に任命されるまでは、だぶだぶのスカート、適当なサンダル、いつも野暮ったい服装で、髪型もこだわりゼロだった。運動音痴でとことん地味。

だが一方で物理学は超得意、ロシア語も弁論大会で優勝するほどの実力。ここまで徹底した「それっぽいキャラ」だと、漫画の登場人物みたいだ。かっこいい。

だが、その生い立ちや考え方については、かなり謎の多い女性だ。

■メルケルは自分自身で自伝を出版したことが無いが、彼女を分析した本は数多く出ている。

『世界最強の女帝 メルケルの謎』は、彼女の人生や政治手法に関する本なども参考にしつつ、「予備知識が無くてもざっくりと彼女について手軽に知ることができる本」だ。

まずやっぱり、誰もが気になるのは、「物理学者が首相になるってどういうこと?」って話だ。

ベルリンの壁が崩壊してすぐ、研究所を辞職して政治の道に進みだした。不安定な情勢の中、堪能なロシア語を評価されたりしながら、どんどんと出世していった。

政治で何をしたいのかという「野心」については謎に包まれているが、彼女が政治を選んだ転機は「壁の崩壊」ということになるかもしれない。

父親は牧師。日本のような世襲議員は一般的ではないが、それでもドイツの政治家は若い頃から専門的に政治を学んでいる場合が多い。

本書前半には「メルケルが首相になるまで」について書かれていて、「いかに彼女が権力が集中する方へチャンスを手に入れていったか」という特殊な経緯がしっかり書かれている。

本書後半では彼女について解説しつつ、EU・アメリカ・中国などの勢力がこの数十年間、どう関係してきたか理解できるようにも書かれている。

ギリシャの財政破綻などのユーロ危機への対応を通じて、メルケルの時代にヨーロッパの中心はフランスからドイツに移った。

そのヨーロッパと何かと利害関係にあるロシアのプーチン大統領もまた、諜報活動のためにKGBからドイツに派遣されていた経歴があり、ドイツ語がうまい。

お互いの優秀さを認めつつも、激しく対立する両者。メルケルは犬が苦手なので、プーチンは会うたびに犬のぬいぐるみを配置したり、実際の飼い犬を連れてきたり、など

謎多き女性メルケル