石炭火力発電は多量の二酸化炭素(CO2)を排出するため環境に悪い――。こんな世界の通説を覆す技術に日本の電力会社が挑んでいる。中国電力は8日、アンモニアを石炭燃料に混ぜることでクリーンな発電を実現する技術に関する特許を出願したと発表した。奇抜な独自手法への期待は高い。

アンモニアの化学式は「NH3」。水素を含み、燃焼しても二酸化炭素(CO2)を排出しない。アンモニアは常温で圧縮するかマイナス30度程度に冷却すると液体になり、水素エネルギーを大量に運搬できる。

中国電力は国立研究開発法人科学技術振興機構と協力し、7月3〜9日に水島発電所(岡山県倉敷市)で新技術の実証実験を行った。出力15万5千キロワットで運転する石炭火力にアンモニアを1時間あたり450キログラム投入し、発電効率が落ちないことを確認した。アンモニアの混入量は燃料の0.6〜0.8%。混ぜた分だけ二酸化炭素の排出量が減る。事業用の発電所でアンモニアを燃焼するのは国内で初めてだ。

さらに、出力を12万キロワットに落として運転したところ、排ガスの窒素酸化物(NOx)濃度が減ることも発見した。中国電力は将来的にはアンモニアを約20%まで混ぜることが可能とみて、さらに研究を続ける。

アンモニアは肥料や石炭火力発電所で脱硝用の還元剤として使われており、電力会社が扱いに慣れている。保管用タンクなど新規のインフラ投資が少なくてすむという利点もある。

他方で、こうした技術開発により、日本の石炭火力発電が独自の進化をとげる「ガラパゴス化」につながる可能性もある。アンモニアを混ぜること以外に、日本では石炭をガス化して発電する技術も開発されており、世界の脱・石炭の潮流から一線を画した独自路線を歩みつつある。「クリーン技術を追求するニッポン」という世界への情報発信も重要になってくる。(花房良祐)

配信2017/9/8 15:07 (2017/9/8 15:38更新)
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ08HCX_Y7A900C1000000/