酒を飲んで車を運転したとして、道路交通法違反(酒気帯び運転)に問われた香川県三木町職員、松家俊樹被告(39)に対し、高松地裁は12日、懲役8月、執行猶予2年(求刑・懲役8月)の有罪判決を言い渡した。

 町長を含む町職員約120人が寛大な判決を求めて地裁に嘆願書を提出していたが、湯川亮裁判官は判決で「同種の事案の中でも犯情は良くない」と述べ、失職が免れられる罰金刑を求めた弁護側の主張を退けた。町はこの日、「司法判断が出たので厳正に対処した」と松家被告を懲戒免職にした。

 判決などによると、松家被告は2月4日夜、同僚らと飲食店で飲酒した後、町内で同僚を乗せて乗用車を運転。信号待ちの車に追突する事故を起こした。

 地方公務員法では、執行猶予を含め禁錮刑以上が確定すると公務員は失職する。このため、同僚らが失職の回避を求める嘆願書を提出。筒井敏行町長や副町長、教育長も署名していた。

 この日、開かれた町議会定例会の一般質問では、町議から署名の真意を問う質問が相次ぎ、筒井町長らに辞職を促す声も上がった。

 筒井町長は一般質問に答える形で「嘆願書は個人としての心情に基づき提出したが、町民の批判やご指摘を重く受け止め、心からおわびする」と謝罪した。

 町議らは「個人と公の線引きはどこにあるのか」「町三役が署名することの重みを考えてほしい」などと非難し、「事の重大さを考えて辞職すべきだ」と迫った。

 また一般質問の中で、事故当時、松家被告の車に同乗していた同僚職員を、町が3月に訓告処分にしていたことも明らかになった。

 町によると、問題の発覚後、全国から約300件の問い合わせや苦情が寄せられ、「公職にある者がなぜ嘆願書を出すのか」などと批判を受けたという。議会を傍聴していた町内の無職男性(76)は「三役が署名したことは非常識。町民として恥ずかしい」と憤った。

 今回の判決や嘆願書について、飲酒運転の問題を研究する小佐井良太・愛媛大教授(法社会学)は「飲酒運転は一歩間違えば重大な事故につながり、今回の判決は妥当」とし、「飲酒運転に対し、独自の厳しい規定を設ける自治体もある中、嘆願書は自治体職員として軽率な判断だったと思う。町長は本来、飲酒運転を町からどうやってなくしていくのかを、先頭に立って考えるべきではないか」と話した。

 県警によると、県内の2016年における交通事故死者数は61人。人口10万人当たりの死者数は6・25人で全国ワースト3位。飲酒が主な原因となった死亡事故は7件(死者7人)あった。

http://yomiuri.co.jp/national/20170913-OYT1T50057.html