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<米IT大手、WDの訴訟に懐疑の視線>

銀行側から最終期限とされた8月31日が接近しても、対WDの交渉は決着しなかった。

交渉関係者によると、その時、べイン・SK陣営に強力な援軍として登場したのが、アップル(AAPL.O)や複数の米IT大手企業だった。

INCJやDBJが資金拠出できない間は、アップルなどが6000億円近い資金を供与するというスキームが出来上がった。

アップルなどの資金拠出の背景として「WDの対東芝訴訟の意図をいぶかしく感じている」──ことがあると、先の交渉関係者は指摘する。

WDは過去にアップル向け製品供給を絞り、値上げした経緯があり、アップルはWDに不信感を持っていると、あるIT業界関係者は語る。

アップルが「WD陣営に売却したら、TMCからはメモリーをもう買わない」と東芝に伝えていると複数の交渉関係者は指摘する。その背景には、米IT業界に存在する企業同士の「葛藤」が存在しているようだ。

東芝が13日、日米韓連合と覚書を交わしたことについてWDは、「発表に失望した」などと声明を発表。合弁契約に基づき、同意なしに第三者への売却を禁じる「同意権」についても、「守ることができると引き続き確信している」とした。

WDは国際仲裁とは別に、米カリフォルニア州でも売却差し止め仮処分を求めていたが、WD側が求めていた差し止め判断は示されなかった。

べイン・SK陣営関係者は「WDは年内には国際仲裁への訴訟を取り下げざるを得ないだろう」と自信を示す。

<日米韓連合に残る死角>

だが、売却交渉に関与している複数の関係者からは、ベイン・SKグループとは違った見方が出ている。

WDとの訴訟リスクに関し、多くの関係者が指摘しているが、そのほかにも懸念材料があるとの声が上がっている。

ある関係者は「日米韓連合の提案は、まだ、煮詰まっていない」と指摘し、提案の詳細を検討し、契約書の締結に至るには、かなりの曲折を要するとみている。

また、WDとの訴訟を抱えたままで、銀行団から6000億円の融資を得るのは難しく、2兆4000億円の規模を維持できない可能性があると指摘する。

別の関係者は「きょうの覚書に法的拘束力はなく、外部に対し、交渉が進んでいることを見せる目的があったのではないか。譲歩しないWDを揺さぶりたいという東芝の思惑も透けて見える」と話す。

最終盤でリードした日米韓連合が、このまま契約にこぎつけるのか、それともWD陣営が大逆転を果たすのか──。

中国など主要国の独占禁止法をめぐる審査期間を勘案すると、実質的な時間は9月末までの約2週間しかないというのが、交渉関係者の大方の見通しだ。

どこが最終的な買収者になるのか、見方が真っ二つに分かれたまま、ゴールテープが見えつつある。

終わり