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>調査の動機が科学的なものとは到底言えない

粕谷俊雄は「経費をまかなえる頭数を捕鯨でき、しかも短期では終わらない調査内容の策定」と言っている。



◇殺さずとも解明可能 「科学目的」に疑問−−帝京科学大教授(※当時)・粕谷俊雄氏
国際捕鯨取締条約は確かに、加盟国に調査捕鯨を認めている。しかし、調査捕鯨の続行には問題が多い。
理由は大きく分けて3点ある。
1点目は、実験動物の扱いとして適切なのか、という問題だ。
多くの学会では、実験動物に必要以上の苦痛を与えないよう自主規制している。
同条約はクジラを水産資源と見ている。しかし、クジラは人類共有の財産であり、加盟国の私有物ではない。
1946年の条約調印から60年たち、世界の常識的な動物観に合わなくなってきている。
それでも科学のために捕鯨を続けると言うのであれば、研究者のエゴイズムでしかない。
2点目は、調査捕鯨は同条約が認める「科学目的」なのかという問題だ。
調査捕鯨の年間経費は約60億円。このうち国の補助金などを除いた約50億円をクジラ肉の売上金でまかなっている。
売上金がなければ捕鯨関連団体は維持できず、船舶会社も捕鯨船の建造費などを回収できなくなる。
この枠組みは「経済行為」そのものであり、そこには研究者の主体性が反映される余地などない。
決して、同条約が認める「科学目的」ではないのだ。
3点目は、調査捕鯨の手法は科学的に妥当なのかという点だ。
日本鯨類研究所は「致死的調査でなければデータが取れない」と主張する。
しかし、生体組織の一部を取り出すだけでも、脂肪の含有量や妊娠率は分かる。餌の内容は糞(ふん)を採取すればよい。
第2期調査の最大の目的は「生態系モデルの構築」だ。
現在、海洋におけるクジラ類の役割を解析するための生態系モデルがないことから、モデルづくりの必要性は理解できる。
耳あかから得られる年齢情報だけは殺さなければ手に入らないが、まずは商業捕鯨と第1期調査で蓄積した
膨大なデータを使ってモデルをつくり、足りないデータがあった場合に限って、調査捕鯨で補うべきだ。
私は80年代に水産庁に在籍し、調査捕鯨計画の立案にかかわった。
その際、我々に与えられた条件は「経費をまかなえる頭数を捕鯨でき、しかも短期では終わらない調査内容の策定」だった。
今では、法の網をくぐるような調査捕鯨の発足に手を貸したのは、うかつだったと悔やんでいる。
(毎日新聞 2005年10月3日)