友ケ島に生息するタイワンジカ
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  大阪府岬町でニホンジカとの交雑が確認されたタイワンジカが、隣接する和歌山市沖の無人群島「友ケ島」から数キロ泳いで渡ってきた可能性が高いことが国立遺伝学研究所(静岡県)の調査で明らかになった。タイワンジカは戦後、島へ観光用として持ち込まれ、現在は約50頭が生息。交雑が進めば在来種のニホンジカの特徴が損なわれかねず、環境省は「島を柵で囲うなど対策を検討せざるを得ない」としている。

 岬町で昨年7月4日、山裾に設置された駆除用わなに若い雌のシカが掛かった。体の模様がニホンジカと異なり、府が同研究所に分析を依頼。ニホンジカとタイワンジカ、大陸由来のアカシカの遺伝子が検出された。野生環境下でニホンジカと外来種の交雑が確認されたのは国内で初めて。由来と疑われた友ケ島のタイワンジカを調べたところ、ニホンジカの遺伝子はなく、アカシカの遺伝子を併せ持つことが判明した。

 友ケ島は和歌山県と淡路島の間に位置し、大小4島から成る。島の東端から本土まで直線距離で最短1キロで、海域ではシカが泳ぐ姿を漁業者が目撃しているという。シカは10キロ泳ぐ場合もあるといい、同研究所の松本悠貴研究員は「岬町のシカは、友ケ島から渡った個体が本土のニホンジカと交雑し、繁殖したと考えて間違いない」と指摘する。

 一方、和歌山市は旧日本軍の砲台跡が残り、自然にも恵まれた友ケ島をPRしようと2012年からシカを「トモガシカ」とネーミング。キャラクターを作って案内パンフレットで紹介するなど活用を進めてきた。

 ただ、環境省近畿地方環境事務所の担当者は「交雑が決定的になれば、島のシカを減らしたり、柵で囲ったりなどの対策が必要になる」とし、市にもシカの観光利用はなるべく控えるよう伝えたという。

 同省は交雑の広がりなどを調査しており、今年度内にも最終的な結果をまとめる方針。市の担当者は「指摘を受けて今は観光資源として使っていないが、調査結果が心配」と話している。【稲生陽】

 【ことば】タイワンジカ

 ニホンジカの近縁種だが、年間を通じて斑点が消えないなどニホンジカと異なる特徴がある。原産地の台湾では野生環境下で既に絶滅した。和歌山市によると、友ケ島には島を所有・管理していた南海電鉄グループが1955年に観光客を集めようと台湾の牧場から移入。国立環境研究所の侵入生物データベースでは国内唯一の分布地とされている。

配信9/25(月) 13:20配信
毎日新聞
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