9/27(水) 21:11配信

 安倍晋三首相は26日に出演したテレビ番組で、2019年10月に予定される消費税率10%への引き上げについて、08年のリーマン・ショック級の事態が起きた場合は見送ることを示唆した。首相は過去にも「リーマン級の危機」を理由に増税を延期した「実績」があるだけに、「3回目の延期もありうる」との見方が出ており、波紋が広がっている。

 首相は衆院解散を表明した25日の記者会見で、消費増税の増収分の使い道を変更し、国の借金返済に充てる予定だった分の一部を幼児教育・保育の無償化などに回す方針を打ち出した。そのうえで、「国民生活に関わる重い決断を行う以上、速やかに国民の信を問わなければならない」と強調した。使途変更は、予定通りの増税実施が前提だ。

 だが、首相は26日夜のテレビ東京の報道番組で、「現在の状況からすると、(税率)引き上げを行う経済状況を生み出せるのではないか」としつつも、「リーマン・ショック級の大きな影響、経済的な緊縮状況が起これば(延期を)判断しなければいけない」と増税延期に含みを持たせた。

 首相は、17年4月に予定されていた増税の判断を控えた16年春、通常国会などで「リーマン・ショックや大震災のような事態が発生しない限り、予定通り引き上げる」と繰り返し答弁していた。

 だが、16年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で突如、リーマン・ショックを引き合いに出して危機感を表明。数日後の記者会見では「現時点でリーマン級の事態は発生していない」としながらも、「世界経済は大きなリスクに直面している。危機に陥ることを回避するため、あらゆる政策を総動員する」として、2回目の増税延期を決めた。

 その後、リーマン級の危機は起きておらず、結局、増税は首相の一存で決まることが明らかになった。首相は14年11月に景気低迷を受け、「個人消費を再び押し下げてデフレ脱却も危うくなる」と増税を延期し、衆院を解散している。

 SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「2回目は事前に軽減税率導入を決めるなど準備したにもかかわらず延期しており、今後も延期のリスクはある」と指摘。「増税を判断する際の政治、経済状況によっては、リーマン級の危機が起きていなくても、新しい理由を作り出して3回目の延期に持ち込む可能性はある」(経済官庁幹部)との見方も出ている。【工藤昭久】

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