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Liam Proud

[ロンドン 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州連合(EU)欧州委員会のベステアー委員(競争政策担当)は、おひざ元では税制上の抜け穴をふさぎ、不公平な課税制度との戦いで勝利した。しかし今後は課税制度の手直しで米政府の合意を取り付けるという難題が控えており、強敵とまみえるのはこれからだ。

ベステアー委員は4日、ルクセンブルクが2003年から米アマゾン(AMZN.O)に税制上の優遇措置を与えたことで、アマゾンは欧州での売上高の4分の3について支払うべき税金を納めていなかったと指摘。ルクセンブルクに対してアマゾンから2億5000万ユーロを徴収するよう命じた。皮肉なことに、アマゾンの滞納が指摘された時期にルクセンブルクの首相を務めていたのは現欧州委委員長のユンケル氏だった。

アマゾンは裁判に訴えることを検討しており、ルクセンブルクも欧州委の決定に異議を唱えている。

しかし、今回の決定は企業の税逃れ撲滅を目指す欧州委の「聖戦」において画期的な出来事だ。欧州委の戦いは極めて順調に進んでいる。アイルランドは米アップル(AAPL.O)からの130億ドルの徴収に乗り気でないようだ。しかしベステアー委員はこの件をEU司法裁判所に持ち込む方針で、動きが加速するだろう。

さらに重要なのは、最もはなはだしい税逃れ手段の一部は利用が難しくなっていることだ。アイルランドは企業に対し、同国内で法人登記しながら税制上は非居住者となるのを認める仕組みを2014年に打ち切り、2020年には完全履行する予定。ルクセンブルクも昨年末に、企業グループ内の別法人同士の取引を使った課税逃れを難しくする法律を成立させた。ベステアー委員は、アマゾンはこの手立てで2006─14年に課税を逃れたと訴えている。

課税逃れと戦う欧州委を待ち受ける次の敵は米政府で、これまでよりもはるかに強大な相手だ。欧州委は先月、実店舗小売りが標準だった時代の制度を駆使するハイテク大手に課税する取り組みの枠組みを示した。企業は「恒久的施設」を保有していると認められた国で課税されている。ハイテク企業はわずかな数の実店舗か、もしくは実店舗を全く持たなくともオンラインでサービスを提供することができるため、EU域内における実効税率が非デジタル企業の半分程度にすぎないと欧州委は試算している。

税制を手直しし、施設だけでなく商業活動の場所も考慮するのが一つの案で、経済協力開発機構(OECD)はこうした作業を進めている。しかしこうした動きは、理論上は米国で課される税を奪うことになりかねない。どんな内容であれ、米国での税制見直しを伴う措置は難航する。ましてやトランプ米大統領が、欧州にとっては税収増、米国にとっては税収減となる取り決めに合意する姿は想像できない。

●背景となるニュース

*欧州連合(EU)欧州委員会のマルグレーテ・ベステアー委員(競争政策)は4日、ルクセンブルク政府が米アマゾンに対して約2億5000万ユーロに上る違法な税務上の優遇措置を与えていたと述べた。

*ベステアー委員によると、ルクセンブルクが2003年からアマゾンに優遇措置を与えたため、同社は欧州における利益の4分の3ほどが課税されていなかった。

*EUは加盟国に対し、違法な国家補助に金利を上乗せした金額を企業から徴収し、いかなる競争上の優位も是正するよう求めている。ルクセンブルクはアマゾンが収めていない税額を正確にはじき出す必要がある。

*ロイターによると、アマゾンは欧州委の今回の決定について法廷で争うことを検討中。

2017年10月5日 / 08:04 / 37分前更新