NECは、人工知能(AI)を活用して商品棚の前での消費者の行動を把握する技術を開発した。カメラの撮影画像をもとに、買わなかったが手に取った商品などを特定できる。POS(販売時点情報管理)データの購入履歴からは分からない客の興味度を知ることができ、販促などに役立つ。複数の小売業と実店舗で実証実験をしており、実用化を目指す。

天井に設置したカメラで商品棚の前を撮影した画像をもとに「触れただけ」「手にしたけど戻した」を区別する。分析用ソフトウエアが画像内に人が入ってくるのを認識。あらかじめ設定しておいた商品棚に手を伸ばしたのをとらえて「触った」と判定する。

NECは画像処理に使うAI技術、深層学習をもとに、消費者の手の位置を特定し、手の周りの形から商品を持ったかどうかを識別する技術を開発した。商品棚に手を伸ばすと棚の触れた位置を特定し、その周辺を切り出して商品の有無を識別する。これにより「手にしたけど戻した」場合を見分ける。消費者の行動は商品ごとに記録する。

これまでは手であろう範囲に注目して、棚に触れた前後の色やサイズの変化から「手に取った」と認識する手法があったが、精度は高くなかった。

実際に小売店で3日間、173人の顧客を対象に精度を確認した。顧客全体の約85%で「触れた」ことを認識し、「買った」「手にしたけど戻した」「触れただけ」という動作の識別の精度は約9割だった。ガムは難しいが、菓子の箱やペットボトル程度の大きさならば識別できるという。

解析結果は顧客の要望にあわせて表示する。商品ごとに「触れただけ」「手にしたけど戻した」という頻度で色分けして示したり、商品棚の前に滞在する時間と、手を伸ばした人数の関係を分析したりして提供する。

NECは同業種ならば他店で学習したソフトでもそのまま活用できると見込んでいる。別の技術と組み合わせれば、店舗内で人が滞留する場所の調査や、特設コーナーの効果の把握などにも使えるという。(科学技術部 藤井寛子)

商品棚の前での消費者の行動を把握する
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AIで商品棚の前の公道を識別
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配信2017/10/11 6:30
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22082380Q7A011C1X90000/