【ベルリン=宮下日出男】オーストリアの国民議会(下院)選挙(総選挙)の投開票が15日に迫った。中道右派の国民党が優勢だが、どの党も過半数の議席確保が困難とされる。反難民・移民を掲げる大衆迎合主義(ポピュリズム)的な極右、自由党は第2党躍進をうかがい、約12年ぶりに政権参加する可能性が強まっている。

 選挙は国民党と中道左派の社会民主党による大連立政権が事実上崩壊し、前倒しで実施される。最近の各種世論調査では、国民党は支持率33〜34%で首位。ケルン首相の社民党と第3勢力の自由党がそれぞれ22〜27%、24〜27%で第2党を激しく争う展開だ。

 ドイツなどを目指す大量の難民・移民の経由地となったオーストリアでは流入に対する国民の不満を吸収して自由党が伸長。昨年の大統領選では同党候補が決選投票に進出して接戦を展開。政党支持率でも長らく首位を維持した。ただ、国民党は5月、31歳と若く、難民にも強硬姿勢をとるクルツ外相を党首に据え、支持を取り戻した。

 焦点は新政権の枠組み。過去10年、大連立してきた社民党と国民党はともに大統領選で第1回投票敗退という異例の結果に終わり、難民や経済政策をめぐる対立を深め政権も崩壊した。大連立継続の可能性も残るが両党は消極的とされ、ともに自由党と組む選択肢を排除していない。

 自由党が政権に参加すれば、ナチ擁護発言などで物議を醸したハイダー元党首の下で2000年に国民党との連立(〜05年)を発足させて以来。当時は国際社会から批判が噴出、欧州連合(EU)の各国が制裁措置に踏み切った。

 自由党は近年、極右色を抑え、英国離脱の混乱に伴ってEU離脱も辞さない姿勢も弱めたが、主権返還なども訴えるEU懐疑派。政権入りすればEU内の協調に影響が出る可能性もある。ドイツでは右派「ドイツのための選択肢」(AfD)が9月の総選挙で躍進したばかりで、各地の大衆迎合政党が再び勢いづく可能性もある。

配信2017.10.11 22:01更新
産経ニュース
http://www.sankei.com/world/news/171011/wor1710110031-n1.html