私たちはパラダイムを通して世の中を見ている。
コヴィー博士が「私たちは物事をありのままに見ているのでなく、私たちのあるがままに見ている」と言っているように、人はこれまでに獲得した情報や考え方、立場などの枠組みで物事を見る。
コヴィー博士はパラダイム転換の身近な例として、自身が地下鉄の車内で体験したエピソードを紹介している。

日曜日の朝、静かな地下鉄の車内に1人の男性と子供たちが乗り込んできたときのことだ。
子供たちがひどく騒ぎはじめたのに、男性は目を閉じたままその状況にまったく気づかない様子だった。
しびれを切らしたコヴィー博士が男性に子供たちを大人しくさせるよう控えめに促すと、彼はこう返事した。
「たった今、病院から出てきたところなんです。1時間ほど前に妻が……、あの子たちの母親が亡くなったものですから、いったいどうすればいいのか……」
その瞬間、いらいらした気持ちは一瞬で消え去り、同情や哀れみの感情が自然にあふれ出て、コヴィー博士はこう申し出た。
「それは本当にお気の毒に。何か私にできることはないでしょうか」

パラダイムが変わることで、男性に対する考え方や行動が一瞬ですべて変わったのだ。

http://president.jp/articles/-/10948?page=2