病的窃盗(窃盗癖) Pathological stealing (kleptomania)
窃盗症 Kleptomania
疾患の具体例
37歳、女性。スーパーで100円、200円の品物を盗むことがやめられません。財布には十分にお金が入っており、特別欲しい物ではありませんが、
盗む前の緊張感と、盗んだあとの達成感や開放感が心地よく、
つい何度も繰り返してしまいます。自分でも悪いと思っていますが、つい先日は、友人の家から小物を盗みました。
犯人が自分であることが疑われ、心配のあまり抑うつ状態になりました。
様子がおかしいと感じた夫に連れられてメンタルクリニックを受診すると「窃盗症」と診断されました。

特徴
物を盗む衝動に駆られ、それを抑えることに何度も失敗する障害です。窃盗の前には緊張感や高揚感があり、実際に窃盗を犯す時は快感、満足または開放感を経験します。
多くの場合は小売店から盗んでいますが、自分の家族から盗むこともあります。盗む物を自分が欲しいとか、お金がないからという理由ではありません。
また、転売して儲けようといった考えがあるわけでもありません。
盗んだあとに人にあげたり、隠したり、こっそり返しにいくこともあります。通常の盗みと違うところは、盗みたい衝動に抵抗しようとしながら失敗することや、
いつも必ず1人で犯行に及ぶこと、金銭的価値のない物でも盗むことなどです。
盗みがいけないことだという意識は持っており、逮捕されることを絶えず恐怖し、しばしば抑うつ的になっています。
そのため、すぐに逮捕されそうな時には盗むことを避けます。
ある研究では、盗みの頻度は1カ月に1回もない場合から120回と、非常に広範囲にわたります。

有病率
窃盗症は、万引きで逮捕された人のおおよそ4〜24%に見られます。一般人口における有病率は非常にまれであり、約0.3〜0.6%です。女性は男性より多く、3:1の比率です。